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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色を守るからくり師(8)

「馬鹿なことをおっしゃらないでくださいな。あたくしは、赤の術士です」

野江が慌てて答えると、クロウは大きく笑った。

「そんなこと、紅が許すわけないだろ。紅と会って、分かった。紅は多くの仲間に恵まれていて、紅自身、それを知っている。遠次ら長老、忠義を尽くす赤影、義藤、都南、佐久、柴、秋幸ら若く新しい仲間、そして、野江。紅は誰も手放したりしない。自分が仲間に支えられていることを知っているから、仲間のために命を惜しまない」

まるで、野江の不安を見透かされているようであった。そして、遠次が言った。

「かつての、お前たちを知っているのは、もはや儂と柴、老いた赤影程度。何も怯えるな」

遠次の言葉が野江の胸に迫った。

「赤い羽織は、ここで預かろう。赤い羽織がなければ、主ら二人がおったところで何の疑惑もない」

遠次が皺のある手を差出し、野江は深くうなずいた。そっと羽織の肩に手をかけると、当然のように鶴巳が後ろから羽織を脱ぐのを手伝った。それは、野江と鶴巳の関係ならば当然のことだ。遠次は野江が袖を抜いた羽織を預かると、羽織を腕に掛けた。

「義藤に預けておこう。あいつは、しばらく外にでることは叶わぬであろうから、あいつに預けておけば、暇を持て余し、きれいにしてくれるからの」

遠次は悪戯めいた笑みを浮かべた。義藤の几帳面さは周知の事実だ。無理をしすぎる義藤が、倒れてしまっては何にもならない。無理をしすぎる義藤だからこそ、少し休む必要があるのだ。今、動ける者が少ない。

「鶴蔵、朝霧を使え。主なら、乗れるであろう?」

鶴巳は、深く頭を下げた。


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