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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色を守るからくり師(7)

 火の国に黒の色神クロウが来た時は、野江は嫌な気分にしかならなかった。黒の色神に、火の国の内部をかき回されるような気がしたのだ。それは、長年、鎖国を続けた火の国の閉鎖的な考えなのかもしれない。今、黒の色神は火の国を助けてくれている。もちろん、黒の色神がもたらした、火の国への甚大な被害を忘れることは出来ないが。崩れた官府、官吏からの問責はこれから紅と野江ら術士が抱える課題だ。紅が力を弱めているのならば、尚のこと。しかし、外部からの風は、閉塞していた火の国の空気を入れ替えることが出来る。

 黒の色神はさらに続けた。

「本当ならば、俺は火の国のために尽力しなくてはならない。しかし、今の俺にはそれほどの力がない。小さき異形の者を使い、諜報活動をすることは、俺の最も得意なことなんだが、今の俺にはそれさえ負担だ。――イザベラを連れていけ。イザベラは、他の異形を生み出すより力を使わずに済む。だから、連れて行ってくれないか?少なくとも、からくり師を守る程度は出来るはずだ。イザベラは不死だから、身を呈して守ることが出来る。だからこそ、連れていってくれないか?」

イザベラは、小型の犬ほどの大きさしかない。黒の色神の力なのか、黒い犬のようにしか見えない。連れていても、不信に思われることはないだろう。野江がイザベラを見ていると、遠次が口を開いた。

「紅には儂から話しておこう。野江、鶴蔵と共に行け。一人より、二人の方がいい。思い出すな。お前たちが、紅城に来た日のことを。鶴蔵と一緒に行くには、イザベラの力を借りるしかない。イザベラを連れて行くことが条件じゃ」

遠次の言葉に迷いはなく、鶴巳は深く頭を下げていた。

「野江」

低く呼ばれた声は、クロウからだ。

「宵の国で、俺は欲していた。背中を預けることが出来る、多くの仲間を。愛する人はいるが、俺には共に戦う同志がいない。どうだ?一緒に宵の国へ来るか?」

クロウの突然の言葉に野江を息を呑んだ。


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