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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色を守るからくり師(6)

「やっと見つけた」

黒い声が響き、野江は慌てて振り返った。そこには、黒の色神が立っていた。一緒にいるのは、遠次だ。黒の色神の黒い着物は、まるで喪服のようであるが、背の高い黒の色神が袖を通すと、演劇役者のようになってしまうのだ。

「黒の色神……」

野江は驚いた。そして、鶴巳は怯えたように身を縮めた。黒の色神は首を横に振った。

「クロウだ。君たち、赤の術士は赤の色神を紅と呼ぶ。ならば、俺はクロウだろ?」

黒の色神は黒の石を取り出すと、それは異形の者に変じた。小さき異形の者であるが、見覚えがあった。

「名をイザベラという。俺が初めて生み出した黒の石。力を決して失わない異形の者。あの時、暴走したのもイザベラだ。――あの暴走のせいか、俺の力は今、弱くなっている。イザベラもこの様だ。遠次には話したが、多分、赤の色神紅も同じ状態だ。だから今、火の国の戦力は減弱している。白の色神は好戦的な人でないが、何もないとは言い難い。俺が最後に異形の者を通じて見た白の色神は、身をひそめていた。しかし、求める者を手にしようとして、一体、白の色神はどうするのか。俺には分からない。だが、火の国自身も内部に火種を抱えている。何もないとは言い切れない。だから、遠次に頼んで警告に来たんだ。美しき、火の国の術士にな」

クロウはさらに続けた。

「白の色神は、幼い娘だ。病弱で、聡明な娘。孤独の海にいる幼い娘。宵の国を統一し、異国との接触を持った俺に、最初に連絡をとってきたのは、流の国だった。流の国は、俺と白の色神に警戒していた。白の色神ソルトは、長年の間、雪の国を支えてきた医療施設を廃止したのだと言っていた。幼い娘は、閉じられていた雪の国を改革しているんだ。今の紅もそうだろ?俺もそうだ。行動力のある色神は、時に疎ましがられる。白の色神ソルトは危うい存在だ。幼い娘。稀に見る行動力。雪の国にとって、現在の白の色神ソルトがどのような存在なのか、俺には想像がつく。俺自身、そして赤の色神と重ねれば容易い。秀でる力は、時に疎まれる。そんなものだろ」

黒の色神は、戦乱の宵の国を統一した実力者だ。火の国は鎖国をしているから、野江は異国にあまり興味がない。けれども、佐久が険しい顔をしていた時のことを良く覚えている。


――宵の国が、優れた色神を手にしたか……


基本的には温和な佐久が、険しい表情をすることは珍しい。火の国の中にいながら、常に異国に目を向け続けた佐久だからこそ見えたものがあるのかもしれない。


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