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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色を守るからくり師(2)

「野江、あっしも行きやす」

ふと、鶴巳がそんなことを口にしたから、野江は持っていた頭絡を思わず地に落とした。

「鶴巳、あなた何を……」

言ってるのか、という前に鶴巳が反論した。

「野江、あっしも行きやす」

何を考えているのか、野江は理解できなかった。下村登一の乱の時、鶴巳が怪我をした時の恐怖を、野江は鮮明に覚えているのだ。

「鶴蔵、何を言っているの?」

野江が鶴巳に攻め寄ると、鶴巳は何も言わずに目を背け、そして低い声で言った。

「野江を守るのは、あっしの役目。それは、昔も今も、変わりやせん」

言った鶴巳は、再び野江を見た。ぼさぼさの前髪の間から垣間見える鶴巳の目は、とても強い。通常、陽緋である野江を守る存在なんていない。野江は術士の頂点に立つ存在であり、野江より強いのは事実上紅だけなのだ。紅が術士を守るなど、世間的に間違っている。今の紅はそのような行動をとるだろうが、それは、紅として間違った行動なのだ。だから、野江を守る存在など、いるはずがない。術士でない鶴巳が、野江を守るということは、ただの戯言でしかない。それでも鶴巳は野江を守ると宣言する。鶴巳の言葉が戯言でないことを、野江は知っていた。出会ったころから、鶴巳は何も変わらない。

「それは出来ないわよ。あたくしたちは紅の力なの。勝手な行動は許されないわ。鶴巳はここに残りなさい」

野江は鶴巳に言ったが、鶴巳は頑として退かない。こういうところの鶴巳の頑固さは、昔から変わらない。

「あっしは、紅のからくりし。それより先に、野江の使い走りでありやす」

鶴巳は譲らない。しかし、勝手な行動は許されない。特に鶴巳は優秀なからくり師。その身を危険にさらすことはできない。

「馬鹿なこと言わないでちょうだい。あたくしは陽緋野江よ。あたくしを守る人なんて存在しないわ」

野江は、鶴巳に目を向けなかった。

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