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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
403/785

白が欲する色(18)

ソルトは医学院を廃止した。医学院で行われていた人道を無視した実験は正しいと思えない。少数の犠牲の上に、多くの人の生活を作り出す。ソルトは犠牲となった者だ。ソルトの友や仲間も母も医学院で命を落としたのだ。医学院を廃止したソルトは、実験体となっていた者たちを救った。しかし救ったのは実験体であって、雪の国の民の多くは医学院の廃止に反対していた。いまだに、雪の国の医療は最先端を歩んでいる。優れた医療を求めて、他国の富豪が訪れる。しかし、いずれ、雪の国の医療は追いつかれるだろう。その時、雪の国はどうなってしまうのか。そんな漠然とした不安がソルトの中にあった。

 ソルトは神だ。白の石を生み出す神。しかし、神はソルト個人に当てられたものでない今のソルトが死ねば、必ず次のソルトが現れるのだから。医学院を廃止したソルトは、雪の国にとって、不要なソルトなのかもしれない。不要なソルトに待つ未来は、死のみだ。元来、体の弱いソルトには危険が付きまとう。不要なソルトを殺そうと思えば、それは赤子の手をひねるよりも簡単なこと。

「人は自らの力で生きていける。医療の研究に頼る雪の国の政策も良いかもしれない。それでも、医療がなくとも人は生きていける。どの国も、石の力にだけ頼って生きている国はないのだから」

冬彦は俯いて、それでもはっきりと断言した。

「雪の国の気候はきびしいの」

ソルトは冬彦に言った。一体、ソルトは冬彦に何を求めているのか。肯定してもらいたいのか、否定してもらいたいのか、受け入れてほしいのか、拒絶してほしいのか、ソルト自身が答えを知らないのだ。ただ、溢れる感情がそこにあった。氷人形と揶揄されるソルトの心が、ここにあった。

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