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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白が欲する色(17)

「火の国は、豊かな国ね」

ふと、ソルトはそんな言葉を口にしていた。白の色神である以上、平素から失言に優位して、言葉の一言一言を考えているというのに、今のソルトは思った言葉を口にしている。ソルトの本心を引き出す、それが冬彦の一色の力なのではないかと思うほどだ。

「雪の国は冷たい国よ。夏は短く、冬は長い。火の国にも雪は降るのかしら?」

尋ねると、冬彦はうなずき、答えた。

「北の方では、一面雪に包まれると聞いたことがあるが、この都では年に数度、白い世界に包まれるほどだ。逆に、南の方では滅多に積もることはないと、行商人が話していたのを聞いたことがある」

火の国は気候の良い国だ。四季があり、水と緑に恵まれている。農業が充実しており、民の大半が農作物を作り生活をしているようだ。都は活気に包まれて、露店には様々な食物が並ぶ。雪の国は違う。

「雪の国は冷たい国よ。一年の半分は雪に包まれて、夏が短く冬が長い。行商人や旅人が雪の中で命を落とすのは、珍しいことじゃないわ。作物を作ることが出来るのは、雪の国でも南部の方だけ。あとは、狩猟や漁、鉱物の産出で経済や生活が成り立っているのよ。その中で、雪の国が持つ最大の輸出品は何だと思う?」

ソルトの言葉に冬彦が困惑しているのが分かる。彼は何も答えなかった。答えなかったが、ソルトは続けた。彼に近くにいて欲しいという願いがソルトを動かしているのだ。

「雪の国は、医療で成り立っているの。そもそも、白の石は命を扱う石。誰もが喉から手が出るほど欲する石よ。命は何よりも大切なもので、命を捨ててまで手に入れたいものは、あまりないでしょ。無いとは言い切らないけれども。だから、白の石はとても高価な石で、異国へ輸出すれば、その一つで多くの民の生活を支えるの。けれども、それだけでは雪の国の広大な土地で生きる民をさせるには不十分なのよ。だから、雪の国は、医療を発展させたの。外国にない、最先端の医療技術を提供することで、雪の国は確固たる地位を手に入れた。もし、柴の命を奪いかけた黒の毒があったとしても、雪の国は必ず解毒法を見つけ出す。それも、石に頼らない解毒法をね。もし、黒の色神が異国と戦争をすれば、内部で戦争をすれば、解毒法は高い値段で売れるの。それに薬が必要ならば、尚のこと。薬は高値で売り出される。そういうものなの。――でも、私は雪の国に必要な医学研究を奪ったの」


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