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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
399/785

白が欲する色(14)

 ソルトとアグノはマントのフードを深くかぶり、異人の象徴である髪と瞳を隠すと、冬彦に連れられて都へと戻った。都は騒然としていた。音だけがソルトの耳に入り、都の人々の慌ただしさが伝わった。

「ソルト、官府が落ちています」

端的なアグノの言葉が、ソルトに現実を伝えた。黒の色神が官府を襲撃したのだろう。

「紅……」

冬彦の低い声が響いた。冬彦は赤の色神紅を案じている。そう、冬彦が守るべきはソルトでないのだ。冬彦は白の一色をもっているが、赤の術士だ。ソルトを守るのは筋違い。どれほど、冬彦の色を思って、欲しても、冬彦はソルトの術士でないのだから。

 冬彦がいれば、何の不自由もない。見た目の幼さと比べても、冬彦は火の国の常識に長けている。宿番は不思議どう冬彦に言っていた。

「子供が宿ねえ」

中年の男はいぶかしんでいた。子供と、顔の見えない大男と、抱きかかえられている子供。「怪しい匂いがするな。しかも、爆発やら官府やら、こんな時期に宿とはな」

中年の男の疑りは深い。すると、冬彦は強い口調で言った。

「客商売だろ。こんな時だからこそ、上客は逃がすなよ」

冬彦は言うと、アグノが預けておいた布財布を台の上に乗せた。財布の中から金が零れ落ちる。

「こちらは、北陸からいらっしゃった資産家。突然の雨にひどく震えていらっしゃる。無礼のないようにしろよ」

冬彦は言うと、零れた金を財布に戻した。そして、身を乗り出すと、男に迫った。

「部屋はどこだ?」

それは、子供とは思えぬ口調であり、子供とは思えぬ荒々しさであった。ソルトは冬彦のことを何も知らないが、彼の色を知っている。白だ。ソルトを信頼させ、安心させる色だ。

「三階の菊の間を好きにお使いください。何が御用があれば、何なりと」

中年の男は、鍵を取り出すと冬彦の前に置いた。どうやら、観念したようだった。もし、姿を見せることが出来ないアグノとソルトの二人であったら、宿に入ることなどできないだろう。誰が見ても火の国の民である冬彦の力があってこそなのだ。

「ありがとうな」

冬彦は答えると、鍵を受け取り身をひるがえした。


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