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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白が欲する色(12)

 柴を救ったのは、ソルトなのか、冬彦なのか分からない。ソルトは冬彦を手に入れるために、柴を救ったようなものなのだから。

「白」

ソルトは白を呼んだ。通常、色は色神よりも上に立つ。紅よりも赤が。クロウよりも黒が上に立つはずだ。しかし、ソルトと白の関係は逆転している。ソルトは白を呼んだ。

――私のソルト。

白は存在しない手で、ソルトの頬に触れようとした。しかし、それは叶わない。白とソルトは違う世界に存在しているのだから。

「白、紅はあなたの姿が見えるんでしょ。紅に伝えなさい。柴は救われた、とね」

アグノにはソルトの独り言にしか見えないだろう。それでも、ソルトは気にしていなかった。

――私を、使い走りにするつもりですか?ソルトは色使いが荒すぎる。

白は珍しくソルトに意見した。

――ソルト、あなたは愛しいソルトだ。けれども、私は色。人の世に関わりすぎることは許されないのです。ソルト、分かってください。

ソルトは白に言葉を理解したつもりだが、納得はしなかった。色が人の世に関わらないというのなら、色が人を選び器とする時点で間違っている。

「いいから、行きなさいって。紅に恩を売りなさい。紅に協力しなさいよ」

ソルトは白に言った。アグノと冬彦が困惑しているのが分かる。気にしてはいられない。白に行ってもらわなくてはならない。ソルトと白の関係は、色神と色の関係としては特殊なのかもしれない。それでも、ソルトは白に接する方法を変えるつもりはない。白がソルトを選び続ける限り。

 白は深く溜息をついた。そして、ゆっくりとした言葉で答えた。

――分かりました。紅に恩を売りましょう。紅は白の石を持たないまま、黒の色神との戦いに挑むでしょう。もし、紅が傷ついたり、紅の仲間が傷ついていたりしたら、紅に恩を売るために雪の国の知識を与える。それで良いのですね。

白がソルトに確認を求めてきた。雪の国にとって、医学の知識は白の石に次ぐ輸出品だ。その知識は高度であればあるほど、利益を得るものであれば、あるほど、国家機密に近い扱いにされる。病から命を取り戻すために、人は何も惜しまない。ソルトたち実験体の犠牲の上に勝ち得た知識だ。それを火の国の渡すこと。雪の国の弱体につながることだ。今のソルトが許しても、次代のソルトは許さない行為だ。知識は、人の脳にとどまり、次の命も救う。ソルトの頭の中にいくつもの、選択肢が生まれた。

 そもそも、ソルトは何のために、紅に恩を売ろうとしているのか。それは分かり切っている。ソルトは、冬彦を手に入れたいのだ。冬彦の白の一色を、見失いたくないのだ。

「好きになさい」

ソルトが答えると、白は深く頭を下げた。そして、消え去ったのだ。



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