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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白が欲する色(11)

 冬彦は困り果てたように頭を掻いて、パンと己の頬を叩いた。

「救って欲しいさ。彼は、こんなところで命を落として良い人じゃない。そんなこと、彼と面識のない俺でさえ知っている」

ソルトは白の石を取り出した。毎日一つ、ソルトが必ず生み出す石。アグノを救っても、まだ、予備は十分にある。この一つの石があれば、雪の国の貧し民の大勢が冬を越せる。ソルトは柴の命にそれだけの価値を見出そうとしているのだ。

「冬彦、あなたが使いなさい。彼らに姿を見られないように注意して、他の石で気を失わせてから使うの。冬彦の力なら、できるでしょ」

ソルトは冬彦に言い、白の石を冬彦に差し出した。

「ソルト?」

アグノが信じられないといった反応を見せたが、ソルトを咎めたりしなかった。そもそもアグノは、命に対して寛容だ。柴の命を救って欲しいと願っているのだから。

「冬彦、時間はないわよ。救いなさい」

ソルトの言葉に従ったのか、柴を救うためにソルトにすがったのか、冬彦は立ち上がりソルトの手から白の石を受け取った。

「気づかれないようにすれば良いんだろ」

冬彦は小さく悪態をつくと、手拭いを出した。白い手拭いで顔を隠した。それでも不十分に思い、ソルトは自らが羽織っていたマントを渡した。ソルトはアグノに抱かれているから、今は必要ない。小柄な冬彦は、ソルトのマントであってもサイズに違和感はない。姿を隠した冬彦は、青の石を取り出していた。そして、そのまま小屋の中へ飛び込んだのだ。冬彦は一瞬の動きで、小屋の中に侵入すると、鞘に入れたままの刀の一太刀で、女術士の意識を奪った。直後、柴のみぞおちに刀を叩き込むと、柴の意識も奪った。

「石を使うまでもねぇな」

冬彦は青の石をしまうと、ソルトが渡した白の石を取り出した。

「感謝しろよ。柴。――あんたを救えば、俺の罪も少しは軽くなるのか?」

冬彦はそっと柴の前に膝をついた。冬彦の罪。冬彦は少し前まで紅の命を狙っていたと話していた。それが、冬彦の罪なのか。ソルトが思っていると、冬彦は白の石を握りしめていた。

 冬彦は白の石を柴の胸に当てると、一つ息を整えていた。冬彦の持つ白の一色が強まった。ソルトの心を満たす白だ。白の石の力を完全に引き出す稀な一色。ソルトが冬彦に執着する理由だ。


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