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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
395/785

白が欲する色(10)

「あの術士は命を落とします」

アグノがソルトに言った。アグノはソルトに何をしろというのか。ここにソルトがいる。白の石がある。ソルトであれば、柴を救うことは容易い。ソルトは命を扱う色神なのだから。

「アグノ、あの術士に興味があるの?」

ソルトはアグノに尋ねた。比較的小柄な火の国の民の中で、大柄な体を持つ術士。黒が混じっているが、彼の一色は大きさと広がりを持っている。若き術士に慕われる存在であることは確かであった。

「いえ、彼の命を惜しんだ己がいるだけです。間違っていることと知りながら」

アグノはそれ以上何も話さなかった。命は平等だ。それは、ソルトが常にアグノに示していたこと。命を操る石を生み出すソルトであるからこそ、命の贔屓は極力行わないようにしていた。白の石は国益のために使う。それが医学院を廃止したソルトの、雪の国への贖罪なのだ。しかし、ソルトはアグノを救った。己の中に生じている矛盾など、ソルトはとうに知っていた。アグノが、それに気づかないようにしているだけなのだ。

 ソルトは隠し持っている白の石に手を触れた。この石があれば、柴を救うことが出来る。ソルトは雪の国の色神だ。雪の国の利益にならないことに、白の石を使うことはできない。強引でもいい。もし、柴を救うならば、ソルトは柴を救う理由を探し出さなくてはならない。

「冬彦、あなたは彼を救ってほしい?」

ソルトは残酷な質問を冬彦に投げかけた。ソルトにとって、白の一色を持つ冬彦は魅力的な存在だ。雪の国にも滅多に存在しない。白の一色がソルトを暴走から守った。冬彦が柴を救って欲しいと願えば、ソルトは柴を救う口実を手にすることが出来る。手にすれば、柴は救われ、ソルトは冬彦を捕えることが出来る。冬彦は己の価値を知らないのだから。ソルトは冬彦を、柴という命の牢獄に捕えようとしているのだ。


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