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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
394/785

白が欲する色(9)

 ふと、小屋の中から声が響いた。

「柴、あなたは死ぬのですか?」

女術士が黒の混じった動けない男に尋ねた。男の一色には黒が混じっている。黒の色神が何かしたのだろう。命を失うことは明らかで、一刻の猶予も残されていない。

「死ぬ……だろうな」

柴という男は答えた。自らの死を覚悟して、それでも冷静さを保っている。ソルトは多くの人を見てきたが、そのような人を見たのは初めてだった。男は女術士に言った。

「どうか……俺が……命を失った後のことを」

息も絶え絶えで、それでも前を見ている男の強さを、ソルトは感じた。どうやらそれはアグノも同じらしく、無意識だろう、ソルトを抱きしめるアグノの腕の力が強くなった。あれが誰なのか、ソルトは知らない。紅が信頼しているだろう術士であることは、明らかだ。

「あれは、誰なの?」

ソルトは小屋の中の人に気付かれないように、冬彦に尋ねた。冬彦は影から小屋を覗き込み、壁にもたれかかるように座り込んだ。雨は止んでいるが、小屋の周囲に生える草は濡れている。すでに濡れた着物だから、気にしていないようであった。

「俺も見たのは初めてだ。柴という名は知っている。他の術士の噂に上がるから。これまで各地を放浪して、紅城にいなかったから。優れた術士だと、俺が知るのは他の人の話だけだから」

冬彦が落ち込んでいる。それは、柴という術士が命を落とすからかもしれない。

「あなたが、死んだあと、どうするって言うの?」

女術士が柴に詰め寄っていた。すると柴は大きく息を吐いて、そして答えた。

「薬師……責めないでくれ。野江や……都南は……きっと混乱するだろうから……すべて俺が仕組んだのだと」

柴は優しい目で気を失っている足のない女へと目を向けた。

「葉乃は……生きるべき人だ。……彼女の力は……紅を守る」

すると、女術士は柴に詰め寄った。

「あなたの加工の力も必要です。あなたが紅の石を加工するから、術士は優れた力を発揮することが出来るのです。あなたが、野江や都南、佐久あらを導いていたのでしょう。先代の時代から、紅城で戦い続け、若い力が育ったら各地の情報を収集する間者のような真似ごとを。あなたがいるから、紅は戦っていけるのです。数の減った私たち赤影を支えてくれるのも、あなたなのです」

女術士の手は柴の肩を掴んでいた。彼女は泣いていた。泣いているということは、柴という人の人となりを示している。


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