表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
392/785

白が欲する色(7)

 雨は強いがソルトは雨に濡れることはなかった。アグノの確かな足取りで、前に、前に進んでいた。ソルトは溢れ出る黒を感じながら、そちらの方向へとアグノたちを誘導した。

 黒は溢れ出てとても暴力的だった。同時に、黒に立ち向かっている色も見える。それは、一見すると赤のようであった。しかし、立ち向かう赤はソルトの心をざわめかせる。それでも、ソルトが心を失わないのは、赤が今にも黒に飲み込まれそうであるからだ。黒に立ち向かう赤は、今にも黒に食われそうであった。相手は黒の色神。一介の術士が立ち向かえる相手ではない。

 雨で森は足場が悪い。アグノの体は時折大きく傾きながら、それでもソルトを包み込む腕は力強かった。溢れる黒の力が強大だったから、ソルトは黒の色神がすぐ近くにいるのだと思っていた。しかし、黒の色神はソルトの想像以上に森の奥地にいるようであった。次第に、厄色と思われる赤は消え、黒だけが溢れ出ていた。そして、黒は力を失ったかのように消えた。黒の色神に何かがあったということは、確かなことであった。

「クロウ」

ソルトは黒の色神の名をつぶやいた。面識はない。それでも、同じ色神として、同じ赤に惹かれた者として、思うところはある。クロウとソルトは似た者同士なのだ。

「黒の色神は無事なのですか?」

アグノが落ち着いた声色でソルトに尋ねた。黒の色神は無事なのか、ソルトにもその答えは分からない。黒は急激に弱まり、消えゆこうとしている。厄色と思われる赤も遠ざかった。無色の行方も分からない。黒の色神と厄色の争いの間に、無色がいたことは確実なことであるが、無色が何かをしたとは思い難い。無色を巡って黒の色神クロウと、厄色を持つ術士が争ったのだろう。

(紅は何を思っているのか)

ソルトは顔を合わせたことのない紅を思った。紅は無色も厄色も抱えている。火の国の内部にトラブルを抱えて、何を思っているのか。

「分からないわ。ただ、黒の色神の力が急激に弱まったことは確かなの。それは、あたしにも起こりうることよ」

ソルトは思った。黒の色神が暴走したのなら、それはソルトにも起こりうることだ。

「急ぎましょう」

アグノが言い、足を運ぶスピードが速まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ