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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白が欲する色(6)

ソルトにとって、アグノは充実な番犬であった。どのような言葉に対しても、二つ返事でソルトのために動いてくれる。そのような存在であったのだ。しかし、アグノは躊躇った。動くことを躊躇ったのだ。もちろん、それがソルトの身を案じる言葉であっても、ソルトは驚きを隠せなかった。

「ソルト、忘れないでください。私は、あなたを守るために存在します。あなたの身に危険が生じるならば、私はあなたの命令にも反するのです」

アグノの言葉は端的で、包み隠すようなことをしない。だからこそ、ソルトはアグノのことを信頼しているのだ。

「大丈夫」

ソルトは答えた。暴走する黒の色神、そして赤の色神が生かした厄色。その二つがいることは、アグノたちに伝えていない。伝えないのは、アグノに連れて行ってもらうためだ。アグノはソルトの足であり、手であり、体である。だからアグノが動かなくては、ソルトはどこにも行けないのだ。浅はかなソルトの嘘など、アグノは見抜いているかもしれない。しかし、アグノは二つ返事で答えた。

「分かりました。どこに行けば良いのか、教えて下さい」

アグノが言った直後、ソルトの体が宙に浮いた。アグノがソルトを抱き上げたのだ。

「ありがとう」

思わず、ソルトはアグノに言った。アグノはソルトをマントで包み、雨風を防ぐと抱き上げた。宙に浮いたソルトの体は、大地のように確かなアグノの腕に包まれていた。

「俺も行くよ」

そっと、冬彦の言葉が響いた。マントを持たない冬彦は雨にずぶ濡れの状態だった。冬彦の一色がなければ、ソルトも暴走という穴に陥っていたかもしれない。冬彦の白を持つ一色は、ソルトを支え、ソルトに安心を与えた。白と相性の良い者は少ない。他の色がどうなのかは知らないが、白と相性の良い人は少ない。ソルトの支えとなっているアグノであっても、白との相性が完全に良いかと問われれば、異なる。アグノは完全なる白ではない。他の色の方が近いかもしれない。冬彦が一緒であれば、ソルトはアグノのような大きな味方を手にしたような気がしたのだ。


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