白が欲する色(3)
冬彦の手は温かい。まるで、太陽のぬくもりのようであった。手の温かさがソルトの道標となった。握った手が道を示し、暴れる白はジョジョに落ち着きを取り戻し始めた。
「大丈夫、落ち着いてください」
アグノの声がソルトの体に響いた。暴れる白は収まらない。けれども、冬彦の色が近くにあれば大丈夫なように思えたのだ。
白が暴走するのが落ち着いたのは、黒が落ち着いた時と同じだった。落ち着けば、黒が弱っていることが理解できる。
「何が起きたのですか?」
アグノが優しくソルトに語りかけた。ソルトは詳しく説明しなかった。正直なところ、詳しく説明できなかったのだ。何かが起こった。それは確かなことであるが、何が起こったのか、何が原因なのか、ソルトには理解できなかったのだ。
――厄色です。
白の声がソルトの中で響いた。
――火の国は厄色を抱えている。
目を細めると、雨の下に白が立っていた。厄色とは何なのか、ソルトは知らない。
「どういうことなの?はっきりして」
ソルトは雨の中に立つ白に言った。白とソルトは生きる世界が違う。だから、違う世界で生きている白は雨に濡れることがない。白が生きているのか、そのことは定かでないが。アグノと冬彦に白の姿は見えない。色の姿が見えるのは、色神だけなのだ。
――私の愛しいソルト。落ち着いてください。貴女には必要ないと思い、黙っておりました。ですから、落ち着いてください。
白はいつも周りくどい。ソルトはそれが嫌いだった。しかし、ここで荒立ったところで、白の姿が見えないアグノと冬彦が不信に感じるだけ。ソルトはよく見えない目で、白の姿を見つめた。