始まりは赤い風から(14)
初めて紅城に足を運んだ時、悠真は許されないほど失礼な行動をとった。赤の色神が親しみやすい彼女でなければ、悠真は処刑されていてもおかしくないのだ。同じ二の舞を踏まないように、悠真は廊下に膝をついた。
部屋の中には香しい匂いと、鮮烈な赤が満ちていた。この赤は、紅が持つ色だ。美しく、強い色だ。細かな所作や礼儀を悠真は知らない。こういうところで、自分は遠い田舎から来たのだと痛感させられる。だから悠真は義藤や野江に目を向けて、正しい行動を真似た。
紅の姿は、理想の紅の姿だった。着飾り、高圧的で、そして優雅であった。しどけなく肘掛に体を預ける仕草は、悠真を出迎えたときと同じだ。紅は何かを考えて、このようにして仲間を集めた。行動力のある紅のことだから、その気になれば一人で動き回って仲間を集めることなど可能だろう。それでも、紅は一様に仲間を集め、仲間の前に立った。町がなく、紅は何か行動を起こす。
悠真は紅を演じることがうまい女優だと思っていた。しかし、もう一人、悠真は女優を見た。口が悪い野江が、今まで見たことがないほどの煌びやかさを持っていた。流れるような歩き方や姿勢は、まるで踊りを舞っているようであった。
悠真はじっと、紅たちのやり取りを見ていた。この場では、悠真は何の権限も持たない。悠真は小さく身をひそめ、赤の術士たちの行動を見つめていた。放り投げられた下村登一と瑞江寿和。二人は紅の命を狙った者たちだ。二人を押さえつける義藤、怒りを露わにする都南、そして都南を止めようとする野江。この場に佐久がいれば、状況は違ったに違いない。柴が止めなければ、一触即発してもおかしくない状況だった。