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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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始まりは赤い風から(13)

 その二日後、野江の大きな声が紅城に響き渡っていた。どうやら、柴に怒りをぶつけているらしい。柴がいると、優れた赤の術士たちが皆、子供のようになってしまう。奢らず、それでも柴は強い。悠真は秋幸と並んで、将棋をしていた。秋幸は強い。それは紛れもない事実で、どうやら都南や佐久、義藤も強いらしい。悠真は紅城の将棋での頂点に立つことを諦めようと、すでに考えていた。

 秋幸との将棋に、悠真は一度も勝てなかった。悔しくてもどうしようもない。そう思っていた時、秋幸がきっと空を見上げた。

「紅の召集だ」

秋幸は言うと慌ただしく立ち上がった。

「悠真、紅が集まれってさ」

秋幸は立ち上がり、盤に駒を残したまま悠真に手を差し出した。

「よく、分からないけど、全員集合だ。柴が言っていた、動き始めるってこういうことじゃないのか?」

悠真は秋幸の手を取って立ち上がった。

 外廊下に出た悠真たちは、紅城の上を見上げた。この広い紅城の中、悠真はあまり動き回ったことがない。暇に任せて、秋幸と探検を何度かしたけれど、紅城で働く者や術士に怪訝な顔をされ、小さくなって逃げる結果になってしまうのだ。紅のいる場所は分かる。紅城の一番上だ。今、悠真たちがいるのは客間であり、紅城の中心部から少し離れている。紅はいずれ、秋幸らに自室をくれるだろう。術士として術を使いこなせない悠真が同高は分からないが。秋幸が義藤ら勝るとも劣らない才能を秘めているのは事実なのだから。柴が見抜いたのが証拠だ。そんなことを考えて、行動の鈍い悠真を秋幸は急かした。

「ほら、悠真。急いで」

悠真は秋幸に急かされて、その手を取った。

「黒の色神が近くにいると思うんだ。黒の色神の迎えに遠爺が迎えに行っているはずだから、うまく遠爺と合流できると良いけど」

秋幸は外廊下に出ると、辺りを見渡していた。それでも、誰の姿も見えない。悠真と秋幸は外廊下から紅城の上の方を見た。このまま迷子になれば、悠真と秋幸が遅刻するのは明らかで、悠真は秋幸の背中を追いかけた。

 どたどたと走る悠真と秋幸はいろんな階段を上った。悠真はその後ろを必死になって追いかけた。とにかく、上に上がればたどり着けるはずなのだ。走り回って、紅の間にたどり着いたとき、すでに赤い羽織の術士たちか肩を並べていた。

(なんだ、みんな待っていてくれたんだ)

悠真は呑気にそんなことを思っていた。

「全員そろいました」

義藤が言い、赤い羽織を正すと床に膝とついた。辺りを見渡して、悠真はそこに何人かの姿が足りないことに気付いた。春市や千夏はいるのに、冬彦がいない。都南がいるのに佐久がいない。そんな疑問を覚えながらも、閉じられた部屋から溢れる鮮烈な赤を感じ、悠真は膝をついた。


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