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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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始まりは赤い風から(11)


――厄色。


悠真は、紅とクロウの会話を思い出した。赤丸は厄色を持つ。柴は赤丸の厄色を見ている。そういうことだろう。

「とにかく、近いうちに動きがあるだろう。それまで、お前たちは、ここで大人しくしていろ」

柴は大きさのある動きで羽織を正し、何かを考え込むように将棋盤を見つめた。

「なんだか、今は嫌な感じだ。こんなこと、紅城へ足を運んだばかりのお前たちに言うことじゃないだろうが、先代と今の紅が築き上げてきた術士たちが、手から零れ落ちるように崩れるような気がする。きっと、火の国の色が乱れているからだろうな。火の国に満ちる赤の中に黒が混じっているのは、きっと黒の色神が来訪しているからだ。そして、白があるということは、白の色神もいる。紅の奴は、何かを思って口を閉ざしているのか、俺なら気づくと思っているのか知らないがな。そして、すべての色の乱れの原因を作ったのは……」

柴はそこまで言うと口を閉ざした。柴には見えているのだ。悠真の持つ一色が見えている。一色を見ることに長けた柴は、団子屋で悠真の持つ色を見て、助けてくれたのだから。悠真が火の国に災いをもたらしている。責められる覚悟はできていたが、柴はそこで口を閉ざし、大きなくしゃみをした。柴は鼻水をすすると、「あぁ」と間の抜けた声を出した。

「まあ、誰でも良いがな。俺は先代に命を救われた。地獄の中で生きる俺が、初めて美しい色を見たのさ。それが、先代の赤い一色だ。この命は紅のもの。今まで、野江や都南、佐久に任せて好き勝手やってきたから、今からは俺が動く。力では野江らに超えられたが、まだ俺も役に立つ」

柴はゆっくりと立ち上がった。

「俺は紅城に戻った。これでも先の陽緋と朱将だ。まだまだ超えられたりしない。俺は義藤の石を加工してくる。悠真、秋幸。忘れるな。俺は、お前たちの一色を見て、お前たちを信じた。俺は元来、疑り深い者なんだよ」

柴は立ち上がると、足を進めて外廊下へ向かった。赤い羽織だけじゃない。柴に威厳を感じるのは、柴自身の風格だ。柴の大きさが悠真を照らしていた。

 柴はげらげらと品なく笑うと、そっと外廊下へ足を踏み出した。外の明かりに、赤い羽織が煌めき、大きな背中が広がりを持っていた。

「義藤が目覚めて、紅はそろそろ動き始めるだろう。紅にとって義藤は大きな存在。義藤が倒れて心許なかった紅が義藤に背中を押される。慌ただしくなる。のんびりできるのは、今日ぐらいまでだ。野江や都南が呼び戻されるだろう。俺がいる。もう、紅を混乱させたり、不安に陥れたりしないさ」

そう言い残した柴は、足を進め、光の中へと立ち去った。その後ろ姿に頼もしさを感じ、偉大さ感じたのは、柴が先の陽緋と朱将を兼ねたという実績からだろう。だから柴は、赤い羽織が似合うのだ。確かに柴は、先の紅を、今の紅を支えていたのだから。外の光の中に消えた柴は、鼻歌混じりに歩み去ってしまった。


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