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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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始まりは赤い風から(10)

「会ったよ。義藤の兄に」

悠真が答えると、柴は一つ息を吐き悠真と秋幸が挟む盤の前に座った。柴は将棋の盤を眺めながら口にした。

「義藤にとって、忠藤とはどんな存在なんだろうな」

まるで、柴は赤丸のことを知っているようであった。

「柴は赤丸のことを知っているのか?」

悠真が問うと、柴は大きな笑みを浮かべた。

「知っているさ。俺は加工師だ。赤影の持つ紅の石も加工する。本来なら、赤影にも赤影の加工師がいるはずだった。今、赤影の数は少ないだろ。だから、止む得ず俺に加工の依頼が回ってきたというわけだ。――悠真、お前は色を見ることに長けている。俺や、紅や黒の色神と同じように。一色を見るということは、その人物本質を見るようなことだ。忠藤……いや、赤丸を見て、どのように感じた?俺は、恐ろしく感じたさ。あの強さと潔さに恐ろしさを覚えたのさ。もし、赤丸が紅に反意を抱いたのなら、紅に害をなしたのなら、一体、誰が赤丸を止めるというのだろうか。それが、俺が抱いた率直な赤丸への印象だ。赤丸の人となりがしっかりしているからこそ、何の問題も起きないだけだ。赤丸が道を踏み誤らないように、祈るだけだ。義藤が赤丸のことを意識するのは、当然のことだろうな。秋幸、お前もだろう。お前の一色は、赤丸に惹かれている。だが、踏込みすぎるな。お前自身を滅ぼすぞ。赤丸が道を踏み誤り、紅に刃を向けたとき、誰が赤丸を止めるのか。それは、義藤しかいないだろう。だから俺は、義藤の強さに期待している。義藤が次に本気で怒ることがあるとすれば、紅が命を落とすか、己が手で赤丸を殺したときだろうな。それが、俺が赤丸の色を見て抱いた印象だ」

柴は色を見ることに長けているためなのか、人のことを良く観察している。人となりを客観的に評価し、信頼するべき人に信頼を置いている。

「赤丸が嫌いなのですか?」

秋幸は誰が見ても赤丸贔屓だ。柴が赤丸のことを嫌うような発言をする。それだけで秋幸が困惑するのは確かなことだ。柴はまっすぐに秋幸を見て答えた。

「あんまり、敬語を使うな。俺たちは、赤の術士となった時点で対等な存在。違いがあるとすれば、力の差だけ。いずれ、秋幸は俺を超える。慣れておけ。と言っても、義藤は性格上、固さが取れないんだがな。――いいか、俺は赤丸が嫌いなんじゃない。恐ろしいだけさ。秋幸はあの一色に惹かれている。俺は、あの一色の力を恐れている。良くも悪くも、赤丸の一色は特殊だ。紅も、俺も、悠真も、そして秋幸さえも、赤丸の一色を感じているんだ。赤丸は素晴らしい奴だよ。思慮深く、賢く、強い。それでも、気を抜くな」

柴の目からは、冗談が見て取れなかった。


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