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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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始まりは赤い風から(9)

。当然かもしれないが、悠真に加工された石は渡されない。信頼されていないようで、どこか寂しさを覚えた。

「ねえ、俺の石は?」

悠真は恐る恐る尋ねた。術を使いこなすことが出来ない悠真が、加工された石を持つということは間違っているかもしれない。しかし、悠真は赤の術士の仲間になりたいのだ。柴は豪快に笑い、そっと悠真の肩を叩いた。

「悠真の一色は赤じゃないから、加工するには少し難しいかもしれないな。それでも、いずれ紅がお前に紅の石を渡すかもしれない。それまで焦らず待て。紅から言われれば、俺はきちんと加工するさ」

柴の色は大きく広がりを持ち、暖かい。

「さて、俺は義藤の石を加工するか。あいつ、石が無くて大分苦労したみたいだからな。文句言われたらたまらんからな。お前たち、知らないだろ。義藤、怒らせるとかなり怖いぞ。普段、静かに紅のわがままに付き合っていると思いきや、怒り出すと収拾がつかないからな。気をつけろよ。まあ、あいつが本気で怒るのは、滅多なことがない限りないだろうけどな」

柴は悠真の知らないことを知っている。紅城に長くいて、陽緋と朱将を兼任して、野江や都南、佐久らに物事を教えた柴なら当然のことかもしれない。悠真は義藤の姿を思い浮かべた。抜き身の刃物のようで、どこか近寄りがたい雰囲気を持っている。品が良いのは義藤の生まれが良いからだろう。そんな義藤が怒りに身を任せるのは、どのような時なのか、悠真は単純に興味があった。

「ねえ、義藤って怒ったら、どうなるの?」

悠真が問うと、柴はげらげらと笑った。そして、ふと真面目な表情をすると、目を細めた。

「義藤は強いぞ。あいつは、肝心なところで決めれないところがあるが、それでも、その強さは本物だ。あいつは機嫌を悪くすることは多いが、本気で怒りを露わにしたのは一度だけ。二年前、力を失った都南と、身体能力を失った佐久が紅城を去ろうとした時だ。あいつは、無力な己に怒りを露わにしていたな。義藤とはそういう奴だ。――二人は、義藤の兄に会ったんだろ?」

ふと、柴がそんなことを口にした。赤丸が暴走した紅を止めたとき、柴はその場にいなかった。だから、柴と赤丸の面識はないという形になる。なぜ、柴が赤丸のことを口にしたのか、悠真は理解できなかった。それでも、柴の持つ大きな色は、悠真に抗うことをさせなかった。


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