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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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始まりは赤い風から(7)

「俺、秋幸の色、好きだわ」

思わず悠真は口にした。紅の鮮烈な赤も、義藤の強いが優しい赤も、赤丸の優しいが強い赤も、柴の大きさを持つ赤も、悠真の心を惹きつけるに十分だ。彼らの色は正義と温もりがある。その中で、悠真は秋幸の色も好きだった。心和ませる赤は、時に豹変することを悠真は知っている。豹変したとき、秋幸は信じられない覚悟を見せるのだ。厄色を持つ赤丸に命を救われたのが秋幸であり、赤丸が厄色を目覚めさせるきっかけとなったのも秋幸ならば、秋幸という人の人格を作り出すのに赤丸という人物が大きく関わっている。赤丸がどのような人なのか、赤丸の色を間近で見て、赤丸の言葉を聞いた今なら分かる。

「はあ?」

秋幸は目を見開いて悠真を見た。困惑するのも当然だ。まるで、唐突に愛の告白を行ったようなものなのだから。

「いや、秋幸の一色がね」

悠真が言うと、秋幸は苦笑した。

「そっか、悠真は一色を見ることが得意なんだね。同じようなこと、柴にも紅にも言われたよ。なんだか、褒められているようで嬉しいものだね」

秋幸は照れながら笑っていた。赤の色神である紅も、悠真のように一色を見ることが得意だ。そして、加工師として名を馳せる柴も同様だ。秋幸の赤は、悠真と同じように彼らを惹きつけたのだろう。

 空は黒で覆われている。黒い空に輝くのは黄色の月。黄色は、力を持つ色のうちの一つだ。五大色と呼ばれるのは、赤、青、黄、そして黒と白だ。すべての色は、赤と青と黄と黒と白で作り出せるとされている。そもそも、色で何が優れているとか、悠真には興味もないし、すべての色が美しいと思っているのだから、色神たちにとっては悠真は異質な存在なのだろう。


――色の覇権か……


悠真は心の中で思った。色たちは、何を思って覇権を狙うのか。色たちは、なぜ美しさを求めるのか。すべての色が美しいというのに。


「さあ、悠真。そろそろ寝ようか」


秋幸が縁側から体を起こした。そして、起き上がると大きく伸びをしていた。伸びをして、飛び跳ねるように縁側に立ち上がった。

「紅がさ、一緒にいろってさ。彼女を目の前にすると妙な圧迫感があるのは、きっと彼女が赤の色神だからだろうね。なのに、あの人柄には惹きつけられる。きっと、赤の術士はみんな同じなんだろうね。紅を目の前にすると、俺はいつも緊張するよ。その紅が言ったんだ。今の俺の仕事は、悠真の近くにいて、悠真に迫る危険から悠真を守ることだから」

秋幸は言うと、悠真に手を差し出した。

「ほら、布団敷いて、早く寝よう」

悠真が気兼ねなく話せる友がそこにいた。


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