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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
372/785

始まりは赤い風から(6)

 そして寝転がっていると、秋幸の着物の衿から紐が見えた。紅の石を下げているのだろう。柴が戻ってきたから、秋幸にも柴が加工した石が渡されるはずだ。そう思っていると、悠真は紫の石の存在を思い出した。人を繋ぐ石とは便利なものだ。割った相手にしか言葉を伝えられないから、繋ぐことが出来る相手は限られるが、離れたところにいる相手に伝えることが出来るということは画期的だ。


――あれ?


悠真にふと疑問が浮かんだ。紫の石は術を思うように使えない悠真を除き、赤の術士の全員が持っている。もちろん、秋幸も、義藤も。

 悠真は傷ついた義藤と共に下村登一に捕えられた。あの時、義藤は紫の石を持っていたはずなのだ。ならば、紫の石を使って紅に救援を求めることが出来たのではないだろうか。過ぎ去ったことを後悔しても仕方ないが、至らなかったことが悔やまれる。

「秋幸、紫の石ってみんな持っているんだよな」

悠真が尋ねると、秋幸は寝転がったまま答えた。

「そうだね、少なくとも紅に近しい術士は持っていると思うよ。紫の石の数は限られるから、末端まで持っているかと問われると疑わしいけれど、限られた術士は持っている。俺に渡されるぐらいだから、俺よりも紅に近しい術士はみんな持っているだろうな」

悠真は秋幸に目を向けた。

「じゃあ、義藤も?」

悠真が問うと秋幸は笑った。

「そりゃあ、持っているだろうね。だって、義藤は紅に最も近い術士と呼んでも過言じゃない。紅には義藤が必要だから、義藤が持っていないなんてことはないだろうね」

秋幸が答えて、彼は悠真が尋ねたかったことに気付いたらしい。一つ、間をおいて続けたのだ。

「ああ、そのことか。あの時、下村登一の乱の時、義藤の紫の石を使って紅と連絡を取れば良かったということか。結果的に、何にも変わらなかったから、後悔するなんてことはないけれど、知らなければ後味が悪いからな。大丈夫、あの時、義藤は紫の石を持っていなかったんだ。義藤が斬られた時、紐も切れて落としたようだ。俺も、紅城に来てから、紅が赤の術士に紫の石を持たせていると知って、同じことを思ったよ」

秋幸は優しく笑った。同時に、秋幸の色が零れ落ちた。それは、悠真の心を和ませる赤色だった。


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