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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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始まりは赤い風から(5)


――あなたは、強くなれるわ。


無色の声が悠真の中で響いた。まるで、楽しんでいるようであった。


――あなたは強い。


無色の言葉に悠真は背を押されていた。悠真が無色がいるから一人でないのだ。


 紅の行動にはすべて理由がある。悠真はそう思っていた。悠真は紅の心の一端も計り知れていないのだ。

「悠真は強くなれるよ。努力を惜しまなければね」

秋幸はさらりと口にすると、縁側に横になった。悠真の横に秋幸がいる。見上げれば星が見える。

「協力してくれよな、秋幸」

悠真が言うと、秋幸は苦笑した。

「俺にそれほどの力はないよ。俺は野江たちどころか、義藤の足元にも立てていない。紅に連れられて、義藤と一緒に官府に潜入して痛感した。俺は、まだまだだ。未熟だよ」

秋幸がそう思うのなら、悠真は一体どうなるのだろうか。悠真から見れば、秋幸は悠真のはるか上にいる。それでも秋幸は義藤と比べて無力さを感じる。もしかしたら、すべてそうなのかもしれない。義藤も野江たちや赤丸と比べて無力さを感じる。きっと野江もそう思っているはずだ。追い上げてくる義藤に脅威を感じているのかもしれない。

 悠真は思った。自分はいつからこのように物事を考えるようになったのだろうか。田舎に住んでいたころの悠真は、短絡的で、今のことしか、自分のことしか考えていなかった。しかし、紅城に足を運び、紅と出会い、多くの術士と出会い、悠真は変ったのだ。


――色神は、人とは違うのもよ。どのような色神であっても、色神となった時点で普通の人間より優れた力を持つの。悠真は、無色である私を受け入れて、変ったのかもしれないわね。


無色の声が悠真の中で響いた。悠真は夜空を見上げながら思いを馳せた。人が色神となり、内面的なものが変わるのなら、これまでの悠真と別人となってしまったということだ。ならば、これまでの短絡的で幼い悠真は消滅してしまったのだろうか。無力な小猿の悠真は消えて、新たな悠真へと変わったということだろうか。ならば、自分が死んでしまったような気がして、悠真の心はざわめいた。紅は黒の色神クロウも同じように、内面的な変化を感じていたのだろうか。悠真は思いを馳せて、そして戻ってきた。夜空に思いを飛ばしても、何の答えも得られない。だから、悠真は不毛なことをするのを止めた。


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