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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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始まりは赤い風から(4)

 秋幸に導かれて、悠真は風呂に入った。温かい湯に入ると、冷えた体が温もるような気がした。転んだりした傷が痛んだが、それ以上に固まった体がほぐれる感覚が心地よかった。

 湯から上がると新しい着物に着替えて、擦り傷を秋幸が手当てしてくれた。体の重さは消えずに、悠真は秋幸と並んで縁側に座っていた。

 茶を飲みながら、夜の帳が下りた紅城を見つめる。一緒にいるのは秋幸だ。秋幸の色は不思議な色だ。様々な色がめぐり、その中で強い赤が輝いている。何も語らず、口を閉ざす。茶は温くなっていた。秋幸が一緒だと、心が安らいだ。秋幸の色は深みがあるのだ。きっと、秋幸は優れた術士として名を残すだろう。春市や千夏を超えて、術士の中枢へ立つ。そう思ったのは、秋幸の色を見てからだ。

 紅が官府に侵入するとき、義藤と一緒に秋幸を連れて行った。それを知った時、悠真はさほど違和感を覚えなかった。秋幸ならば、当然だと思ったのだ。きっと、紅も秋幸の色を見てそのような判断をしたのだ。きっと、秋幸が官府に侵入したという理由だけでないはずだ。

「なあ、秋幸」

悠真は縁側に寝転がって、秋幸を呼んだ。秋幸は振り返り、どうした、と答えた。

「どうやったら、強くなれるのかな?」

悠真は秋幸に尋ねた。才能溢れる秋幸なら、答えを教えてくれると思ったのだ。厄色を持つ赤丸は、厄色であることで迷惑をかけないように強くなった。赤丸として生きて、赤丸として紅の近くにいる。ならば、無色を持つ悠真はどうするべきなのか。他の色から命を狙われ、紅に迷惑をかける。赤の術士を傷つける。今回のような悲劇が生じるのは明らかだ。

 秋幸は悠真の唐突な問いに戸惑ったように目を見開き、そして微笑んだ。

「強さなんて、生きていれば身に付くものさ」

秋幸の答えは、なんとも短絡的だ。でも、と続けるから悠真は秋幸を見つめた。

「でも、望めば手に入るなんて、そんなものじゃないかもしれない。望んで、それに見合う努力をしなくちゃいけない。争いの渦に身を落とし、それでも道を見失わず精進することが強さを手にする秘訣かもしれない。義藤がその証だよ。俺が知っている義藤は、才能を持っていたが、いつも忠藤の方が上に立っていた。義藤は才能があるが、力というものを良く知らなかったんだと思う。でも、今の義藤は違う。努力を惜しまないから、隠し持っていた才能を開花させたんだ。今なら、義藤は忠藤にさえ並び超えるかもしれない」

秋幸は冷静に赤の術士を見ているのだ。悠真にも可能性があるのかもしれない。

「俺も強くなる」

悠真は、一つ言った。そして心に決めたのだ。


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