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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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始まりは赤い風から(3)

 すると、秋幸は苦笑した。

「俺は赤丸に命を救われたんだ。――昔、俺は今回の紅や黒の色神のように力の収束が出来なくなったことがあったんだ。幼い俺は、力の使い方を知らないまま、無理をしすぎたんだ。その時、忠藤が救ってくれたんだ。あの、厄色の力を使ってね。忠藤が力を使うと、片腕の赤影と俺たちを救った女術士だった。二人は口論を始めたんだ。この場で忠藤を殺すべきだとか、厄色だとか。俺は幼かったけれども、二人の会話の意味をなんとなく理解していた。忠藤は、使ってはいけない力を使ったんだって。忠藤は知っていたんだ。その力が己を滅ぼすこと、それを知りながら、俺を助けてくれた。――その時、俺は初めて誰かに大切にされていると感じたんだ。生まれた時から親を知らず、どこか空虚の中にいた俺の心は、忠藤によって救われたんだ。この命も必要であって、生きていて良いのだと。俺は忠藤に教えられたんだ。忠藤が赤丸になったと分かったとき、俺は納得したよ。忠藤ならば、そうするだろうって。忠藤が俺に教えてくれたこと、それは己の命を大切にすること、命に執着すること、それでも大切な存在のために戦うことを恐れないこと。俺は、忠藤を尊敬しているんだ」

恥ずかしげもなく、秋幸は語った。悠真も赤丸と話した。だから分かることがある。赤丸(忠藤)は、時に悠真にとって計り知れない存在だ。考えていることが理解できない。それでも、彼の言葉に他者を傷つけるようなことはない。どこか、それは秋幸と似ていた。秋幸が忠藤を尊敬しているならば、当然なことかもしれない。

「義藤と忠藤の見分け方。それは、かすかに残る忠藤の手の傷だ。忠藤が俺を救ってくれた時、手に大怪我を負った。それが、二人を見分ける秘訣。手をまじまじと見せてくれることなんて滅多にないから、あまり役立たない秘訣かもしれないけれど」

秋幸の目は遠くを見ていた。

「忠藤はいつも優しかった。俺の性格がこれほどしか歪まなかったのは、きっと忠藤がいたからだろうな。忠藤は、俺の恩師のようなものなんだ」

秋幸が忠藤に抱く気持ち、悠真にも理解できたような気がした。


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