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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色の心(9)

 二人の官吏は身を捩った。焦り、怯えているのだ。怯えて、焦り、二人の官吏の顔にかぶせられた布が外れた。

 二人の官吏は紅の敵だ。紅を追い込み、紅を傷つける。悪しき芽は、根こそぎ抜かなくてはならない。二人の官吏が紅へ暴言を吐こうとしている。野江がそう思った直後、野江の横を赤い風が吹き抜けた。

 ひらりと駆け出したのは、赤い羽織の義藤だった。義藤は一つの歩みで駆け出すと、二人の官吏の首を押さえつけて、畳に押さえつけていた。まるで、赤い疾風。義藤は何も言わない。切れ長の目が、すっと二人の官吏を見ていた。

 義藤の後に、都南が続いた。都南はゆっくりと立ち上がり、ずしりと足音を前に進んだ。都南の手は、朱塗りの刀の柄に触れられている。

先陣を切る疾風の義藤。そして、後から重厚に続く都南。理想の朱軍の姿だ。朱護は、朱軍に併設されている者たちだから、朱軍と朱護は同じだと言える。朱護頭と朱将のどちらの立場が上なのか、野江は知らないが、今の朱護頭と朱将は分かりやすい。義藤と都南という二人だからかもしれないが、朱護頭は朱将に従っている。以前は違った。佐久が朱護頭の時は、朱護頭と朱将は同等だった。朱護頭と朱将の関係は、その人たちの人柄がでる。柴が陽緋と朱将を兼任していたころ、朱護頭らしい朱護頭はいなかった。野江と都南と佐久の三人が、いつも先代紅の近くにいたのだ。

都南は足を進めると、義藤が畳に押さえつけている二人の官吏の間に、朱塗りの刀を鞘ごと腰から引き抜くと、どんと畳に突いた。

「無様な姿を見せるな。それでも、官吏だろ。人の上に立ってきた存在だ。最後まで、誇りを忘れるな」

都南の右の親指が、朱塗りの刀の鍔をはじき、白刃がきらりと光りを放った。都南の溢れる感情が、野江の目に見えたような気がした。今の都南は危うい。野江はそんな感情を抱いた。都南は二年前の戦いで大きな代償を支払った。支払ったものの大きさは、都南自身にしか分からない。未来を奪われたという表現が正しい。言葉には表さないものの、都南の官吏への大きな感情は計り知れない。


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