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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色の心(8)

 定位置に移動すると、紅の間の様子がよく分かる。ここには、香の匂いと一緒に紅の鮮烈な赤が満ちている。

「紅様、この召集は一体何を示すものなのでしょう?」

珍しく、遠次が紅を紅様と呼ぶ。それは、理想の紅を演じる紅への敬意である。中身も本質を知っていても、紅のこの放たれる色を見ると萎縮してしまうのだ。

 紅は優雅に、それでも高圧的に笑った。野江が視線を動かすと、理想の紅に出会ったことがない者は、まるで鶴巳のように身を縮めていた。春市、千夏、そして秋幸。悠真も同様だ。

「黒の色神が火の国に参られた。何の出迎えも無では、火の国の威厳の示しがつかぬであろう」

黒の色神は戸惑い紅を見ている。見慣れないのだ。そんな黒の色神を流し目でみると、紅は優雅に笑った。

「黒の色神、貴殿は火の国に参られた。そして、我らは官府との歩み寄り、そして我らに刃向う者を捕える機会を得た」

紅は言うと口元で笑った。

 すると、赤い光が放たれ、目が眩んだ直後に部屋の中央に二人の人影を見た。二人は両手を後ろで縛られ、頭から布をかけられている。おそらく、この神がかり的な出来事の裏には赤影の力があるのだろう。野江は赤影の赤菊と出会い、赤影を知ってからそのようなことを思うようになっていた。

 縛られた二人の人物が何者なのか、想像することはできる。下村登一と瑞江寿和。二人は紅の命を奪う危険な存在だ。

 周囲を見渡すと、春市、千夏、秋幸の三人が緊張を高めていた。彼らにとって下村登一は敵だ。そして瑞江寿和。彼らは先代紅の殺害にも関与しているはずだ。

「久しいの、下村登一、瑞江寿和」

紅は赤い声を放ちながら言った。彼らは頭から布を被せられて、怯えたように首を動かしていた。

「そちらは、我の敵じゃ。この場で教えてもらおうかの。一体、そちらの黒幕はだれなのか」

紅の責め立てに、彼らは口を閉ざした。彼らは何も言わない。当然だ。紅に囚われ、黒幕を教えたりしたら、彼らの裏幕から財産を奪われたり、今後の立場を失うことにつながる。紅は彼らが答えないことを理解している。彼らが失うものの大きさを知り、彼らが固執しているものを知っている。だからかもしれない。紅は高圧的に、それでも彼らに隙を与えることなく追いつめた。

「好きにすれば良い。我らはそちらを逃がしたりせぬ。我の忠実なる術士が、そちらを追いつめる証拠を手にし、そちらの黒幕さえ追いつめる。待っておけ」

紅は扇子で優雅に扇ぎながら、赤く塗られた目を横目で二人の官吏に向けて微笑んだ。それはあまりに強い笑みだ。赤い色が零れ落ちる。野江であっても、感じることが出来る紅だ。


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