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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色の心(6)

 紅の間では、朱護が護衛として詰めている。今、朱護頭の義藤は野江と一緒にいるから、必然的に紅の護衛をしているのは他の朱護ということになる。野江よりも一回り以上年上であろう術士の朱護が二人、紅の間の前に座っている。何も知らされていない彼らは、突如現れた集団に身を固めていた。それでも赤い羽織の権威は実在で、赤の羽織の集団が集まるだけで只事でないことを理解していた。二人の朱護は、赤い羽織の野江らと一緒に、見慣れない人物が一緒であることに不信感を抱いていた。すると、そっと義藤が二人の朱護の前に立ち、柔らかく微笑んだ。

「何の問題もない。野江や都南、俺もいる。少し、下がってくれないか?」

義藤の声は優しい。その優しさを、野江は知っている。二人の朱護は自らよりはるかに若い朱護頭に深く頭を下げ、その場を去った。

「さて、皆が集まるのを待つとするかの」

遠次がのんびりと口にした。

 直後、廊下を走って姿を見えたのは悠真と秋幸だった。秋幸は野江たちを見て恐縮したような表情をし、悠真は堂々としていた。悠真という人は、肝が据わっている。それから、慌ただしく表れたのは、春市と千夏だった。冬彦の姿が見えなかったが、義藤がゆっくりと口を開いた。

「全員そろいました」

義藤はそう言うと、赤い羽織を正し、そっと床に膝をついた。義藤が言うのだから、本当に全員そろったのだろう。と野江は思った。そう思わせる雰囲気が義藤にはあるのだ。義藤は紅の最も近くにいて、紅の大きな支えなのだから。


野江たちは遠次を筆頭に襖の前の廊下に座った。膝をつき、深く頭を下げる。薬師葉乃も床に座る。戸惑うのは、黒の色神だ。しかし、他国の慣例を重んじることが出来るのが、黒の色神のようだ。彼も野江らと同じように膝を折り、頭を下げた。

「失礼します」

遠次が低い声で言った。術士の筆頭であるのは野江であるが、長年紅城で仕えている遠次が、この場で最も立場が上だ。


 開かれた扉。

 鼻を衝くのは香の匂いだ。


 野江は板間で深く頭を下げた。紅の間に踏み入れるとき、紅は理想の紅を演じている。いつも自由奔放に動き回る紅が、この部屋に仲間を招く。それは、彼女としての姿でなくて、色神紅として野江らと対面するためだ。



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