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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色の心(1)

 野江は紅城の一室にいた。紅が無茶をするのはいつものことで、野江はいつも紅の身を案じていた。野江は先代の紅に命を救われた。術士として紅城に招かれなければ、野江はきっと狂っていた。選別の年齢よりも早く、野江は紅城に招かれた。野江を迎えにきた柴に連れられて、野江は紅城へ足を踏み入れたのだ。

 野江は紅が思っている以上に、紅のことを思っている。彼女に生きていて欲しいと願い

彼女に笑っていて欲しいと願う。最近、紅城は慌ただしい。下村登一の乱に始まり、黒の色神の来訪。紅の敵である、瑞江寿和を捕えたのは、数少ない成果であった。


 野江は最近、何の良い所を見せていない。


悠真の村を守ることが出来ず、春市、千夏、秋幸、冬彦に悠真の村を滅ぼされ、惣次を殺された。四人が紅城に攻め込み、義藤と戦った時、野江は間に合わず、義藤を助けることが出来なかった。下村登一が異形の者を暴走させたとき、野江は最初に力尽き、鶴巳に庇われなければ死んでいたかもしれない。その後も平静を保てず、紅のために戦うことが出来なかった。

 黒の色神の来訪の時、野江は紅に置いて行かれた。団子屋で悠真を守るためにイザベラと戦ったのは、柴と赤影だ。その後、紅と団子屋に向かったが、紅を前線で戦わせる結果になってしまった。紅が官府に侵入するときに、同行者として選んだのは義藤と秋幸だ。野江は選ばれなかった。

 置いてきぼりの野江は、赤丸が気付いた小さき異形の者にも気づかなかった。クロウを連れて、官府に着いたとき、すでに紅は暴走していた。


 そう、野江は無力だった。


 廊下で柴に大声を上げてしまったのも、無力な自分が情けなかったからかもしれない。野江は後悔しながら、自室の畳の上に正座し、ぐっと拳を握っていた。俯き、精神を集中していなければ、取り乱し泣いてしまいそうだったのだ。

「何が歴代最強の陽緋っていうの」

野江は低く呟いた。精神を統一し、必死に気を静める。

「あたくしは、こんなに無力なのに」

野江が泣き崩れそうなのは、こんなにも無力だから。無力なのに、陽緋として大切にされ、無力なのに、歴代最強の陽緋と崇められている。まるで、今の野江は飾りの陽緋だ。飾り物。飾り物であることが悔しいのだ。悔しくて、悲しい。飾り物ということは、野江の辛い過去を引きずり出す。だから、辛く苦しいのだ。


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