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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
348/785

雨の中の白(5)

 白を持つ少年は、目を見開いた。差し出された白の石を見て、戸惑っているのだ。

「使うぞ」

白を持つ少年は、躊躇いもなく白の石を手にした。白の石は高価な石。このまま、少年が白の石を持ち逃げしても、ソルトには少年を追う力はない。石を持ち逃げして、売り払えば、少年は一生遊んで暮らせるだろう。それだけ高価な石を目の前に渡されて、見ず知らずの異人のために使おうと言うものがいるはずがない。ソルトは白を持つ少年が白の石を持ち逃げするのを待った。しかし、少年は使うぞ、と言い逃げようとしない。


 白の石は、白い力を放ち砕けた。辺りの人は逃げてしまい、人影は見えない。これほどまでに、輝いた白の光を見たものは誰もいないのだ。


 ソルトは確信した。白を持つ少年は、白の力を百パーセント引き出した。石の力を引き出す才も申し分ない。もし、彼が火の国でなく雪の国の生まれなら、間違いなく石医師と呼ばれる術士の最高峰に上り詰めただろう。ソルトは自分以外に、これほどまでに白を引き出す者を始めてみた。邪心もなく、勢いのある白。アグノが救われるのは言うまでもない。

「ソルト……」

アグノは目を開き、ソルトの姿を見ると勢いよく体を起こした。そして、ソルトを強く抱きしめた。

「無事か?」

アグノの太い腕が、これまでにないほど力強くソルトを抱きしめていた。

「無事でよかった」

アグノの体は温かく、そして力強い。

「大丈夫よ、アグノ」

ソルトは答えた。そしてアグノは白を持つ少年を見て、ソルトに問うた。

「彼が助けてくれたのよ、アグノ」

ソルトはアグノに言い、アグノは火の国の民のように頭を下げた。



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