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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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雨の中の白(4)

白を持つ者は、アグノの腕を動かした。その時、覆っていたフードがはずれ、アグノの容姿が露になった。

「異人か?」

白を持つ者が戸惑っているのが分かった。火の国は鎖国をしている。基本的に異人は少ない。容姿が異なる雪の国の民と火の国の民が同じなら、それは当然の事。ソルトの持つ白に近い白銀の髪も、目も、彼らから見ればソルトは人でない。化け物のように見えるはずだ。なのに、白を持つ者はアグノの髪を隠すようにフードを戻し、人目を避けるようにアグノの腕の中からソルトを引きずり出した。

 近くで見れば、白を持つ者がソルトより少し年上の少年であることは明らかだった。少年なのに、彼は紅の術士だ。紅を守る術士だ。

 白を持つ少年は、ソルトを隠すようにフードを着せると、ソルトを包み込んだ。

「火の国に異人とは、珍しいもんだな」

言いながらも、白を持つ少年はソルトを隠してくれる。同時に、アグノを案じている。懐から布を取り出すと、アグノの背中に当てて傷を塞ごうとした。骨が折れているのだろう、アグノの肩は変な方向へ曲がっている。

「くそ……」

白を持つ少年は、アグノの様子を見て悪態をついた。アグノを救うには、白の石か、雪の国の最先端医療が必要なのだ。ソルトはフードで顔を隠しながら、白の石を取り出した。これで、アグノを救わなくてはならない。アグノは大きな番犬だ。ソルトを敵から守ってくれる番犬。ソルトを抱き上げてくれた腕。ソルトの名を呼んでくれた声。アグノが死ぬには、未だ早い。

「白の石があれば……」

白を持つ少年は小さく言った。

「白の石があれば、助かるのに……」

火の国の白を持つ術士が白の石を欲した。ソルトはアグノを見た。アグノを救う白の石はここにある。ソルトがいるのだ。白の石がないはずがない。同時にソルトは火の国に来た理由を思い出した。火の国には、白の石の力を百パーセント引き出す術士がいる。ソルトは、その存在に興味を抱いたのだ。

「白の石ならあるわ」

ソルトは白の石を取り出した。ソルトがアグノの命を救うのか、白を持つ少年がアグノの命を救うのか。もし、白を持つ少年がアグノの命を救えなければ、ソルトがアグノを救うつもりだった。白を持つ少年。アグノの命を使って、ソルトは正体を暴こうとしているのだ。命を使って、調査をする。それは、とても残忍なことだ。ソルトがすることは、雪の国の医学院と同じこと。命を冒涜し、弄ぶことだ。


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