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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の助言(7)

色とりどりの飴は、この世の色の一端でしかない。口の中で広がる甘みは、クロウの心を和ませた。

「佐久は紅城のあちことに甘味を隠している。昔、飢えた経験があるらしい」

紅の言葉を聞きながら、クロウは口の中で飴を転がした。ころり、ころりと転がすと、クロウの口の中に甘みが広がる。

 クロウは紅を見つめた。紅が見せる高圧的な雰囲気も、子供のような突飛な言動も、女性らしい一面も、全てがクロウの中に映し出される。


――これが赤の色神。


クロウの視線に気づいたのか、紅は苦笑した。

「あんまり見るな。気持ち悪い」

黒の色神に対しても遠慮のない言葉だ。大国宵の国が、本気をだして火の国を攻めれば、火の国の侵略は可能だろう。しかし、クロウは火の国を攻め落とすつもりはない。むしろ、紅の前に敵が現れるのなら、敵から紅を守りたいと願うのだ。

「今、紅がすることは一つだ。瑞江寿和から真実を引き出せ。先代の紅の殺害の一端を担ったのが、瑞江寿和に違いない」

そんなこと、言わなくても分かるだろう。紅は、これまで火の国を守ってきた。余計なお世話かもしれないが、彼女に世話を焼きたくなるのだ。己の国さえ、不安定な状態であるクロウがだ。

「ありがとう」

紅が笑った時、赤い光が紅から零れた。なるほど、これが赤か。クロウは思った。

 クロウは思い出した。暴走した紅を止めた赤丸。最後に紅の暴走を止めたのは、赤丸が呼んだ紅の真の名だ。そして、紅が呟いたのは、義藤の名。その時のことを、紅が覚えているか分からない。義藤はそっと口を閉ざした。他言するつもりはない。クロウは心の中でヴァネッサに呼びかけた。


――ヴァネッサ、火の国は素晴らしい国だ。


そして思った。


――無色が赤の国、火の国を選んだことに納得できる。


 この国で、クロウは宵の国の進むべき未来を見た。これからも、赤の色神紅は戦い続ける。まずは、火の国の来訪者と接触しなくてはならない。ならば、それまでの間、クロウは紅へ手助けをし、助言をしよう。クロウは誓った。


――己の身を危険にさらしてでも、火の国に足を運んでよかった。


 黒の色神「クロウ」は、この火の国で宵の国の未来を見たのだ。そして同時に、クロウは思った。小さき異形の者を通じて見た、白の色神と流の国の術士。彼らも火の国で何かを探している。異国の来訪は、火の国と赤の色神を悩ませ、苦しませるだろう。それでも、彼らとの接触は、火の国の色神を更なる高見に導くはずだ。

「ありがとう」

思わずクロウは口にした。目を見開き不思議そうにするのは紅だ。そして紅は微笑む。赤い色が零れ落ち、クロウの胸に温もりが満ちる。紅はたまたま仲間に恵まれたのではない。彼女が仲間の心を惹きつけているのだ。几帳面な義藤も、厄色を持つ赤丸も、口の悪い野江も、ぶっきらぼうの都南も、流の国と関係を持つ佐久も、大きさを持つ柴も、彼女に惹かれているのだ。先代が術士に恵まれなかったのは事実だろうが、彼女が運だけで仲間を手にしたのではない。

 赤がそのような色なのかもしれない。見てみたいものだ。紅が進む未来を。黒の色神であるクロウでさえ、そう思ってしまうほどだ。



 第3章 火の国と来訪者 完

一色を読んでいたいただき、ありがとうございました。この話で、第3章火の国と来訪者が終わります。第3章は、悠真、義藤、クロウの三人の視点で進みました。読みにくさもあったと思いますが、おかげで義藤のことが表現できたと思います。黒の色神から白の色神に移ります。これからも、よろしくお願いします♪

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