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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の助言(6)

クロウを前にしたとき、紅は信頼できる仲間を連れて自身で行動した。イザベラの前に刀を持って立ち、官府へ侵入し、紅は自身の危険を顧みず行動した。紅という人の本質は、無茶をする性格に違いない。無茶をして、周囲のものをやきもきさせる。

 おそらく、紅は此度も自ら動こうとするだろう。万全でない体調で、無茶をして白の色神と対峙するだろう。それはとても危険なことだ。紅の欠点は、一人で動こうとするところ。

「同じだから分かる。俺だって万全でない。紅、宵の国の軍師からの助言だ。紅は自分で動く。それは長所であり、短所だ。確かに紅は色神だ。その力は火の国随一。そして紅の強さは強い術士に囲まれていること。紅、その仲間に頼れ」

紅は困惑している。そのままクロウは続けた。

「仲間を危険から遠ざけるために、自分で動く。それは、なんとも紅らしい。だが、優れた力を持つ仲間を、適切なときに適切な場所へと向かわせ、戦ってもらうのも色神として必要な強さの一つだと、俺は思う。――紅、冬彦の探索には野江を向かわせろ。白の色神は幼い少女だ。野江が適任だろう。野江のことを対して知っているわけではないが、彼女の色を、俺は信じている。あの、強がりな色がな」

クロウは野江とヴァネッサが重なって見えるのだ。宵の国と違って、火の国の幹部には女性が多い。そもそも。色神紅が女性であるからかもしれない。クロウの目の前に座る紅は、宵の国の女性と比べて小柄だ。そんな紅がおもむろに立ち上がったかと思うと、閑散とした部屋の戸棚を開け始めた。突然の紅の行動にクロウは戸惑うしか出来なかった。紅は戸棚に顔を突っ込み、覗き込んでいる。奥が見えないためか、畳の上に置いてあった書卓を引きずり、戸棚の下に動かすと書卓の上に乗った。引きずられた書卓は、編みこまれた畳の目を傷つけ、草屑が散らばった。書卓に乗った紅は再び戸棚の中を覗き込んでいた。

「紅、一体何を?」

尋ねると、紅は戸棚に突っ込んだ顔を出すと、クロウを見てにっと笑った。

「佐久の奴が隠してないかと思ってな」

言うと紅は、手を突っ込み、戸棚から何かを取り出した。

「真面目な話をすると肩が凝る。私は、私らしさを失ってはならない」

紅は書卓から飛び降りると、クロウの前の畳に紙包みを並べた。

「飴だ。食べるか?」

紅は紙包みを開いた。その中には、色とりどりの飴が入っており、紅はその中の一つを口に入れた。そして、口の中で飴をころがしながら、話し始めた。

「冬彦の探索は野江を派遣しよう。その助言を聞き入れよう。今回、私は多くの仲間を傷つけた。その中で、赤丸は私が用心していれば傷つかなくて良かったはずだ。私は、色神という力を過信し、前に出すぎていた。忘れてはならないのにな。先代が賊に殺されたことを」

クロウは紙包みの中の飴に手を伸ばした。

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