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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の助言(4)

紅の目が見開かれ、戸惑っているのが分かる。当然かもしれない。術士としてのキャリアの長さは佐久の方が上であるから、当然として佐久を探すべきだと考えやすい。だが、物事は表裏一体ではない。表があれば、裏がある。クロウは小さき異形の者を通じて佐久を見ていた。最後に見たのは、赤丸に気づかれる前である。その時の佐久の様子を思い出すのだ。

「なぜ?」

戸惑う紅の言葉を遮るように、クロウは話した。

「紅、あなたは俺のところへ来た。ということは、俺に助言を求めているということだ。俺は、この火の国を掻き回した張本人。命を救われ、火の国に恩がある。だからこそ、火の国の不利益になるようなことはしない。あなたは、そう考えた。それは間違っていない。俺は、火の国の不利益になるようなことをするつもりはない。この国にも、あなたにも返しきれない恩があるのだから。紅が俺のところに来たのは、俺が火の国の術士でないから。気を使う必要もない。弱さを見せることも出来る。――侮るな。俺は黒の色神。これだけ弱さを見せた後であるが、俺は宵の国を統べる者だ。宵の国で軍師として戦場に立ち続けた。策略や工作は苦手でない。俺は、俺として、紅に助言しよう。――冬彦を探せ。佐久よりも、冬彦が優先だ」

クロウが断言すると、紅は糸が切れたように笑った。女性らしからぬ、豪快な笑いだ。彼女が持つ強さが示されていた。女性という侮りを寄せ付けない。

「私にとっては、佐久も冬彦も仲間だ。この真実をしるのは私と義藤と赤影のみ。私たちで動くには多少無理がある。だから、考えていたんだ。白の色神と流の国のどちらをとるのか」

クロウは紅を見た。紅の目は強い。それは、宵の国の武将のようであった。

「つまり、紅は佐久が流の国と通じていると?」

クロウが尋ねると、紅は頷いた。

「こんなこと、他の仲間には言えないが、私は佐久が流の国と通じていると考えている。それは、裏切りなんかじゃない。佐久は頭が切れるから、火の国を内部から破壊しようとするなら、とても容易いこと。でも佐久はずっと私の味方だった。火の国のために力を尽くしてくれていた。大きな代償を支払い、それでも留まってくれた。感謝する方が大きい。私は、佐久が流の国の術士に攫われたと思っていたが、どうやらクロウが思うにそれはないらしいな」

クロウが理解したつもりだった紅のことが分からなくなった。彼女が見ている世界は、どのような物なのか。同じ色神であっても、クロウは紅に萎縮してしまうのだ。年下の女性なのに、クロウよりも強い力を持つように思える。

「なぜ、佐久が流の国と通じていると確信を?」

クロウは尋ねた。それは、クロウが火の国を、紅のことを知るのに必要だと思ったのだ。

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