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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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藤色の兄弟(9)

 あまりに静かな忠藤の告白は続いた。

「もし、俺が紅に害をなしそうな時、俺を殺してくれないか?本来は、赤山の役割だったのだけれども、彼も年老いてきつそうだから」

忠藤の言葉に義藤は息を呑んだ。なぜ、そのような依頼をすることが出来るのだろうか。なぜ、そのような依頼を何の戸惑いもなく口にすることが出来るのだろうか。忠藤の生きる世界は、義藤の生きる世界と違うのだ。

「俺の命を奪えるのは、お前だけだよ。義藤。俺は、都南にも、野江にも、佐久にも負けない自身があるからな」

義藤は何も答えることが出来なかった。出来ないのに、忠藤は続けるのだ。

「そして、差し出がましい願いだが、俺が死んだら、赤影に入ってくれないか?赤影は、それほど悪いものじゃない。最近、そう思うんだ。赤山が表の世界から裏の世界に入ったのも、きっと赤影について知ったからだと思うんだ。こんなこと、頼めるのは、義藤だけだからな」

義藤の手首を握る忠藤の手の力は強い。傷口が開いたのか、包帯から滲む血が大きく広がっていく。そして、忠藤は息を吐いて手を離した。

「俺たちは兄弟だ。何も変わらない。きっと、生真面目な義藤は、俺にだけ厄色があることに悩むんだろ。お前は、物事を割り切れないことがあるからな。考えてみろ。運命の神は、俺でなく義藤を選んだ。紅を守るのに、義藤を選んだ。だから、義藤には厄色を持たせなかった。そう、考えてみろよ。俺は、厄色を持ったことを怨んだりしていない。今の俺という人格を構成している一部に厄色を持ったことがあるんだ。義藤という弟がいて、紅という色神に出会って、赤山という老兵に出会って、表に怯える赤菊に出会って、赤星という犬に出会い、俺は成長した。時に悩み、苦しみ、それら全てが俺の糧となった。俺は、俺として生きている。兄弟でも、全てが一緒である必要はないだろ」

忠藤は目を細めて言った。

「こうやって、話す機会をくれた紅に感謝だな。義藤を裏の世界に連れてきたことも、俺たち赤影を表に引きずり出したことも、後で説教をしてやらなきゃいけないけど」

そうか、と義藤は思った。忠藤は忠藤なのだ。赤丸になっても、厄色を持っていても、彼が彼であることに変わりはない。

 忠藤が義藤を信頼してくれていることは確かだ。万一の時は、義藤が抑止力として働く。義藤がその覚悟を決めることが出来れば、忠藤は思うがままに生きることが出来る。

「約束する」

義藤は忠藤の手を取った。義藤は強くならなくてはならない。

「万一の時は、俺が抑止力となる。別に忠藤のためじゃない。全ては、紅のため」

言って、義藤は紅と出会ったときのことを思い出した。


――約束だぞ。俺たちで、守ってみせる。


義藤と忠藤は約束した。二人で後の紅を守ると。時が流れ、立場が変わっても、その約束は変わらない。

 近所の子供たちと喧嘩をしたところで、山暮らしの義藤と忠藤は負けたりしない。近所で恐れられたものだ。

(あの子に忠義を尽くす藤色の兄弟)

今になって、そんなことを思い出すのは、今も昔も変わらないからだ。


 義藤は忠藤に言った。

「俺たちは、紅に忠義を尽くす藤色の兄弟だ」

その言葉が可笑しいのか、忠藤は苦笑した。


 やっと、やっと義藤は自らの心の中の穴を埋めたような気がした。




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