藤色の兄弟(6)
赤山は続けた。
「あなたは、前代未聞の紅だ。私は多くの紅に仕えたが、あなたは特別だ。先代とも異なる風格を持つ。先代は厄色を殺さなかった。それは、彼の優しさであり、彼の弱さであり、私が彼に懇願したからだ。だが、彼は先見の目を持っていた。彼は私に命じた。厄色は色神を不幸にする。だからこそ、彼は決めたのだ。彼自身の命が尽きたとき、彼の血を引く子供を殺すことを。――生まれたときは、彼らは知らなかった。忠藤が厄色を持っていることを。厄色を持っていると知ったとき、彼らは忠藤を殺そうとした。それでも、彼らは殺せなかった。そして、彼らが死んだ時、私は殺そうとした。十三歳になった忠藤と義藤を。特に、厄色を持つ忠藤を。でも、私は殺せなかった。忠藤が言ったからだ。赤影として生きるから、この命を捨てたくないと。結局、私は先代との約束を破ったのだ」
赤山は片目を細めて、赤丸を見た。赤丸は困ったように言った。
「赤山はいつもいつも、話す。先代の赤丸は、優れた赤丸だったと。義藤、性格は義藤にそっくりだったそうだぞ。義藤、お前は赤丸になったら優れた赤丸として名を残せたかもしれないかもしれないな。すまない、お前の場所は俺が奪った。俺は、赤丸としてでないと、生きることが出来なかったから。すまなかった。俺は、命が惜しくて、お前から赤丸の地位を奪った。もしかすると、先代の赤丸は、お前を赤丸にしたかったもかもしれないがな」
忠藤は優しい。赤丸になったのは、己のためだと断言する。むしろ、義藤に悪いことをしたと。義藤は、全てが忠藤の優しさだと思っていた。
「お前は強いよ、義藤。今回は特別だ。こうやって、表の義藤と裏の俺が顔をあわせることは許されない」
紅は笑った。
「なら、少し兄弟で話すと良い。もう、二度と顔を合わせることが出来ないかもしれないのだからな」
紅が立ち上がり、そして他の赤影らも立ち上がった。そこに残るは、義藤と赤丸だ。義藤と忠藤だ。