表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
331/785

藤色の兄弟(5)

差し出された細い手を掴むと、義藤は立ち上がった。

「赤山が怒るかもしれないが、生き残った四人の赤影については知られてしまったんだ。もう、隠す必要もないだろう」

そして、義藤は紅に手を引かれて先へ進んだ。手を引かれて進むと、義藤の心は十三年前に遡った。紅は紅となる前、違う名であったころ、義藤はこうやって走っていた。山育ちの野暮な義藤を紅は、こうやって連れまわしていたのだ。

 義藤は紅に手を引かれるがまま紅だけが使う裏道に入った。紅が持つ紅の石に反応して開く道だ。その時、義藤は知ったのだ。紅城の壁と壁の間には、人一人が通ることがで出来る隙間がある。外にいると気づかないほど、精巧に作られている。この道を通り、紅は行動しているのだ。

「この道は、私の道だ。そして、この道は赤影の道に通じている」

狭い壁の間を抜けると、小さな部屋があった。天井と床の間にある部屋だ。身体をかがめなくてはならない部屋。

「かつて、赤影の大半は山で暮らしていた。そして、交代で紅の守役として働く。それ以外の間は、お前たちと同じだ。鍛錬に励み、子供を育てる。今は人数が少ないから、彼らは常に紅城にいるがな」

その窓はなく、蝋燭の火が明かりだった。それは、外からこの部屋の存在が知られないようにするための工夫だ。その部屋の中に横たわっているのは、義藤と同じ顔だった。その横に、赤山と義藤の知らない女性がいる。犬も伏せている。苦笑しているのは、赤山だった。片腕の、顔に深い傷を負った赤山だ。

「まさか、ここまで連れてくるとは思っていなかったな」

赤山は言いながらも紅に頭を下げた。それは、女性の赤影も同じだ。

「菊、赤丸はどうだ?」

紅が尋ねると、女性の赤影が答えた。

「おそらく、問題ないと思います。深い眠りの中にいますが……」

言うと、紅は躊躇いもなく赤丸の横に座ると、赤丸の手を取った。その手の平には、幾重にも包帯が巻かれている。

「私を救ってくれて、ありがとうな。手に二つ目の傷跡が出来てしまったな」

まるで、人形のように横たわる赤丸に紅が語りかけた。その言葉は慈しみ深く、優しい。すると、紅の言葉に反応するかのように、赤丸が目を開いた。もともと色白の赤丸の顔色は、透き通るように白い。彼の体調が悪い証拠だ。硬く閉じられていた睫が開くと、その目は紅を見つめ、そして義藤を見た。

「紅、迷惑かけたな」

赤丸は白い唇でその言葉を口にした。すると、紅は握っていた赤丸の手を叩いた。

「迷惑をかけたのは、私の方だ。お前たち皆を、表の世界に引きずり出してしまったな。特に、赤菊は辛かっただろ」

紅は三人と一匹の赤影を見渡した。

「これから、更なる混乱に陥る。もう一度、私のために戦ってくれるか?」

紅が赤影に頭を下げた。紅にとって、表の赤の術士も、裏の赤影も仲間であることに変わりないのだ。

「命尽きるまで、赤影として、紅に仕えましょう」

赤山が深く頭を下げた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ