表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
330/785

藤色の兄弟(4)


「そして、佐久も消えた」


義藤の心臓が強く脈打った。


――佐久


彼は紅を支える重臣。同時に、何度も義藤も救われた。


「なぜ、佐久が……」


思わず、義藤は言った。佐久は二年前の戦いで深手を負い、日常生活に支障を及ぼすほど体の自由が利かない。頼れる重臣の佐久が消えたことは、鉄壁であった赤の術士に亀裂が生じたということだ。

「二人が消えたことは、誰も知らない。野江も都南も知らない。佐久は所要で冬彦と一緒に外部へ派遣したと言っている。冬彦が一緒だったら、佐久が外部に出ても不思議でないだろう。だが、佐久が消えたということは事実だ。いずれ知られる。白の色神と流の国の術士がこの火の国に進入している中で、二人が消えたことは事実なのだから」

義藤の背にじっとりと汗が流れた。これは、暑さによるものではない。


 火の国の、今の紅の強さは優れた術士が周囲にいることによるものだ。その中で、術士が消えたということ、それが意味するのは火の国の危機だ。


「でも、心配しても何にもならないな。私は、佐久を信じなくちゃいけない。心配なのは

佐久と冬彦が外部に誘拐されるということだが、二人に限ってそれはないだろう。二人とも、優れた術士なのだから。ならば、彼らは彼らの意思で行動している。彼らが火の国を裏切るはずがないだろう。今は、この混乱を静めることに集中しなくてはならないのだからな」

まるで、紅は己に言い聞かせるように言った。最も不安を覚えているのは紅自身だ。だから、義藤は信じなくてはならない。紅を信じて、いつでも、何があっても、紅の隣にいると信じなくてはならないのだ。

「俺は近くにいる」

義藤は思わず言った。紅の近くにいる。それが、義藤が術士になるためのきっかけなのだから。

「ありがとう」

紅が赤く花開いたように笑った。その笑顔の横にいたいと、義藤は常々思うのだ。

「赤丸は?」

義藤は紅に尋ねた。本当は、忠藤と呼びたかった。赤丸なんて呼ぶと、他人行儀で落ち着かない。「忠義」の名で義藤と忠藤は繋がっていた。なのに今、義藤と忠藤を繋ぐものは何もない。あの時は、あんなに近くにいたのに、やっと会えたのに、忠藤は義藤から逃げてしまうのだ。

「義藤、動けるか?ちょっと来ないか?」

紅は笑い、そっと義藤に手を差し出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ