無色を守る赤(2)
「白の色神が火の国に来ている」
紅が言うと、黒の色神が割って入った。
「流の国を忘れるな。流の国の術士も火の国に足を踏み入れている。流の国は術士を他国に進入させる。宵の国にもいた。もしかすると、火の国にもいるかもしれない。もし、火の国に長くいる流の国の術士と、新たな侵入者が手を組めば、火の国を内部から崩されるかもしれないぞ」
黒の色神は流の国に対しても警戒を強めていた。
「だが、流の国はそれほど恐れる存在ではないだろう。私は己の仲間を信じている。例え、流の国と通じている者がいたとしても、私は全てを信じている」
まるで、紅は仲間の中に密通者がいることを知っているようであった。
「あなたも大変な方だ。赤の色神。俺が片付いたら、次は白の色神と流の国を相手にしなくてはならない」
黒の色神の心配に紅は笑った。
「問題ない、私には仲間がいる。この二人は、私が紅となる前からの付き合いだ。特に、赤丸は知っていたはずだ。己が厄色をもっていることを。その上で、紅に仕えようというのだから、私が赤丸を信じないわけないだろ。そして、義藤は言わなくても分かるだろ。私の信頼している人だ。野江は陽緋として私の近くにいてくれる。紅となったばかりのころは、例え義藤が近くにいようとも寂しかったものさ。そんな時、野江は姉のように慕わせてくれた。少々、口が過ぎるが、それも野江だ。今では歴代最強の陽緋だ。都南はぶっきらぼうだな。機嫌が悪くなると刀の柄を握る癖があるが、本人は気づいていないようだな。二年前の戦いで術が使えなくなってから、都南は荒れたが、やはり戻ってきてくれた。術が使えなくなっても、都南の強さは換わらない。佐久も都南のように二年前の戦いで大きな代償を支払った。佐久の知識量と思慮深さは本物で、困ったときは佐久に相談するものだ。あいつは表立って相談したことを言わないし、賢者のような立場になろうともしない。私は佐久に支えられ、佐久を信頼している。柴は先代の陽緋であり朱将だ。一人で先代紅を支えた実力者。野江、都南、佐久が年を重ねると、手にしていた地位を惜しげもなく手放した。二年前に紅城から去ろうとする都南と佐久を引き止めたのも柴だ。放浪癖があるが、火の国各地の様子を私に伝えてくれる。加工師としてあれほどの力があるにもかかわらず、少しも立場に固執しない。あの器の大きさに支えられたことは言うまでもない。鶴蔵は先代の時代に野江についてきた、からくり師だ。からくりの技術は言うまでもない。前線で戦う術士でないのに、赤を受け取ってくれた。遠次は私に全てを教えてくれた。赤影も同じだ。赤山も赤菊も赤星も、皆、私の仲間だ。彼らがいたから私はここまで歩くことが出来た。そして、新たな仲間を手にして、私は更に未来へ進む。彼らの誰かが流の国と通じているはずがない。通じていようとも、私は彼らを信じる」
紅の口から仲間への思いが語られる。その言葉は温もりが深い。火の国は紅一人で支えているのではない。大勢の人が支えているのだ。