赤が救う命(8)
黒が甲高い声を上げた。
――止めなさいよ!赤の色神。あんた、白の言葉を鵜呑みにするつもり?赤の色神は知らないの。白がどんな奴なのか、知らないのよ!赤、あんたも何か言いなさいよ。赤だって、白には痛い目を見せられたでしょ!
すると赤はけらけらと笑った。
――わらわは、そちにも痛い目を見せられたぞ、黒。心など変わるもの。そちが、今の黒の色神と出会って変わったようにの。しかし、そちは言うであろう。何も変わっていないと。本当の己を知る色神が現れただけだと。もしかすれば、白も同じかも知れぬの。わらわは信じるぞ。白をな。それが、赤丸と赤星の両者を救う道じゃ。
赤は優雅に笑った。
――紅、そちの好きにするが良い。
すると、紅は笑い、言った。
「義藤、力を貸して欲しい。赤丸も、赤星も救うために。柴は救われた。白の色神が救ってくれた。この白の石で赤星を救う。赤山、お前、白の石を使えるな。野江よりも、お前の方が白との相性が良い。冬彦を呼び寄せる時間もない。お前が赤星を救え。義藤が私を信じてくれるのなら、義藤の力で赤丸を救って欲しい」
紅が微笑み、赤丸の胸に手を当てた。義藤が断るはずもない。
「俺に救えるなら」
義藤が言うと、黒の色神が白の石を赤山に向かって投げた。赤山は片腕で上手く掴むと、ゆっくりと腰を上げた。
「紅、赤星のことは任せろ」
赤山は低く言うと、義藤が連れてきて、部屋の隅に寝かされてままの赤星を片腕で抱きかかえた。
「赤星を死なせたりしないさ」
赤山は言うと、紅の石を使った。すると、赤い光が輝き、赤山を包んだかと思うと、姿は消えていた。悠真が見る限り、赤山は天井へと消えていった。おそらく紅の石の力で身体の力を増強させるのか、空気を歪めて力を作るのか分からないが、赤山が紅の石を使いこなしているのは確かだ。
「赤山は、赤影の指導者だ。表の世界にいたときは、優れた術士だった。あいつに任せておけば問題ない」
紅が言うと、義藤を見て言った。
「どうやら、赤丸を救うにはお前の力を借りるしかないようだ。私が暴走させた力は、変換されて赤丸の身体に入れられている。しかし、赤丸は人間だから、私の力に耐えられない。赤丸の身体にある赤を、義藤に流す。お前たちは双子だから、赤丸の赤を義藤なら受け止められる。二人に分散すれば、赤丸の命は助かる」
義藤は笑った。
「俺が逃げるなんてことあるわけないだろ。俺にとって、忠藤は目標だから」
義藤の色は優しい。