赤が救う命(5)
それは、紅と黒の色神も気づいたらしい。二人も辺りを見渡していた。
――五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い!
甲高い声が響いたのは、そこに苛立つ黒の姿があった。黒は跳ねながら、黒の色神にまとわりついた。それは、猫が主に甘えるようであった。その姿は赤山や義藤には見えない。しかし、義藤や赤丸な悪戯に尋ねて場を混乱させたりしない。この、色神ばかりいる環境で、人である彼らに知り得ないことがある。そのことを二人は知っている。黒の色神は人には見えない黒の頭を撫でるように手を動かし、そして言った。
「一体、どうしたんだ?」
すると、離れたところに赤も立っていた。赤は妖艶に笑みを浮かべ、口元を扇子で隠しながら笑った。
――なぜ、そちがここに足を運ぶのじゃ?
問うた赤だが、そこには誰もいない。黒が黒の色神の腰に抱きつきながら言った。
――九朗には見えないわよ。あいつ、姿を隠しているから。でも、あたしや赤には見える。さっきから、五月蝿いって言っているのよ!
騒ぎ立てる黒。すると、赤がけらけらと笑った。扇子で口元を隠し、優雅に、それでも笑いは隠しきれていない。
――そう怒るでないぞ、黒。この国に来ておることは知っておった。じゃが、何故、わらわたちの前に姿を表す?この時にな。
赤が細めた目の先に、色の歪みがあった。そして赤は強い声で言った。
――姿を見せぬか!ここは、火の国ぞ。黒と同様、そちが火の国にで行動しておるのは知っておった。何を隠すのじゃ?それとも、そちが白の石を提供してくれると言うのか?
赤が強い口調で追い込んだ直後、歪んだ色の先に一人の男が立っていた。