赤が救う命(4)
義藤の手がゆっくりと赤丸の体に伸びた。そして、義藤は言った。それは、赤丸に語りかけた言葉だ。
「俺は、何も知らなかったんだな。やっと会えたのに、こんなことになるなんて。俺は、いつも無力だった。忠藤はいつだって俺の前にいて、俺をいろんなものから守ってくれるんだ。俺はいつも無力で、何も出来やしない。忠藤は生きなくちゃいけない。俺が死ねば良いのに……」
それは、義藤の本心に違いない。義藤が赤丸の力を認めているのは事実で、彼らが深い絆で結ばれているのも事実なのだ。
「それは違う」
ふと、紅が言った。
「義藤、お前は少しぐらい自惚れたって良いんたぞ。お前がいるから、私は無茶が出来るのさ。そして赤丸。温厚そうに見えて、こいつは吃驚するぐらい頑固だからな。怒らせたら手がつかない。二人がいるから、私は私でいられる。誰も死なせたくない」
紅は言うが、この状況を打開する方法はない。三つの命の中から、一つを選ばなくてはならないのだ。
赤丸の身体では色が暴れている。強力な赤い色が赤丸の身体を壊している。色神でなければ、耐えられない。
――何とかならないのか。
悠真は心の中で思った。そもそも、満身創痍の悠真に何が出来るのか分からない。しかし、このままでは紅は誰の命も選択できず、三人とも命を落としてしまう。
厄色を持つ、赤丸。
燈の色を使うことに優れた犬、赤星。
加工師として優れる、大きさを持つ柴。
悠真は三人を思い描いた。一つ息を吐いて辺りを見ると、色の違和感を覚えた。赤と黒が占める世界が揺らいだのだ。