赤が救う命(2)
悠真は紅を見た。すると、紅はゆっくりと言った。
「皆、席を外してくれないか?黒の色神と話がある。義藤、赤丸、悠真だけ残ってくれ」
そして、紅は天井を見上げた。
「赤山、お前も残るんだ」
離れていても、紅の不敵な笑いが見えそうであった。
「紅、あなた一体何を……」
野江が戸惑っていた。すると紅は強く言い放った。
「ちょっと複雑な話をするんだ。皆、分かってくれ」
紅が言うと、都南が何も言わずに立ち上がり、野江の腕を掴んだ。
「行くぞ」
都南が一つ言い、野江を引きずるように歩き始めた。そして、反対の手で秋幸の腕を掴むと崩れかかった部屋から外へ出て行った。その後に、葉乃や老官吏も続く。残されたのは、紅と黒の色神と義藤と赤丸と悠真だけとなった。
「赤山、降りて来い」
紅は天井に向かって言った。それでも何の返答もない。すると、紅は強い口調で言った。
「山、お前も関係者だ!逃げることは許されない。赤丸の命と向き合え!」
紅の口調は強い。すると、天井の隙間から一つの影が降りてきた。それは、老人だった。片腕を失い、顔には深い傷がある。右目は潰れているようであった。深い傷跡が痛々しく残っている。これが、残る最後の赤影「赤山」なのだと悠真は思った。年齢は遠次を越えるだろう。もしかすると、七十を越えているのかもしれない。白髪に威厳があった。異形の者を押さえるために、秋幸が力を使い果たしても、赤山は倒れなかった。この老人は優れた力を持っているのは事実だ。
戸惑う義藤。困惑する赤山。倒れる赤丸。俯く紅。そして、動けない悠真。すると、黒の色神が義藤を呼びよせ、悠真は義藤に連れられて皆の元へ、紅の元へ近づくことが出来た。皆が集まると、そこには、赤と黒の姿もあった。この二人の姿が見えているのは、紅と黒の色神と、悠真だけだろう。
「赤丸は死ぬ」
一つ口を開いたのは黒の色神で、その言葉に空気が凍りついた。
「紅、火の国にもう白の石は無いのだろ」
黒の色神は言うと、懐から一つの石を取り出し、続けた。
「ここに白の石が一つある。火の国を危険にさらした御詫びとしては少ないが、今の俺が提供できるのはこれだけだ。選んでくれないか?誰を救うのか?」
紅は俯き、何も答えられない。黒の色神はさらに続けた。
「白の石が必要なのは三人。今、紅の暴走を止めるために人間としての限界を超えた赤丸。そして、いざべらの毒を受けた柴と赤星。誰を救うのか、選ぶのは紅だ」
黒の色神は目を細め、紅は首を横に振った。
「私に選ぶことが出来るわけないだろ。皆、私の仲間だ」
すると、低い声が響いた。それは、意識を失っていると思っていた赤丸であった。
「柴を救え」
小さく、今にも消えそうな声で赤丸は続けた。
「柴は表の存在だ。加工師としても必要な存在。柴を救え。――柴が間に合わぬのなら、赤星を救え」
赤丸は己の命を選ばない。悠真にはそれが理解できなかった。