赤に厄をもたらす色(11)
――ぐおぉぉ!
突如、異形の者が吼えた。
悠真の身体の力が抜けた。それは、異形の者が苦し紛れに黒の色神の色を大量に喰らい、足りない色を補填するために悠真の色を大量に喰っているからだ。
「秋幸、力を貸してくれ!」
紅が叫んだ。同時に、無言で補佐する赤い力がある。赤影の一人だと悠真は理解した。下村登一の乱の時に感じた色だ。
異形の者は二人分の色神の色を喰っている。黒の色神と悠真の色だ。二人分の色を喰らった異形の者はみるみる膨れ上がり、強大さを増していた。悠真は恐怖を隠しきれない。
秋幸が紅の石を取り出し、参戦した。秋幸も優れた術士だ。補佐する赤影も優れた術士に違いない。しかし、十分とは言い切れない。紅はさらに力を強めていた。
下村登一の乱の時は、赤の術士たちがいた。野江、佐久、赤影ら、そして赤丸。今、紅は秋幸と二人で押さえ込んでいる。紅の放つ色は、これまで悠真が見たことないほどの強さになった。
悠真の身体の力が抜け始めた。
――時間との戦いなんて、じれったいのよ。
黒がいた。その隣には赤もいる。今、赤と黒が争い、赤の色神と黒の色神が争っているのだ。赤と黒が優劣をつけようとしているようにも思える。
悠真の視界が霞み始めた。力が喰われているのだ。
「悠真、お前なら出来るさ」
義藤の声がぐるぐると渦を巻き、ついたり消えたりする悠真の視界に再び輝きを取り戻させる。今、義藤は何を思っているのか。悠真は義藤を見上げた。強いが優しい義藤は、紅の石を持たない。悠真が色を使い果たしてしまったからだ。ここに義藤の紅の石があれば、義藤が紅と一緒に戦うことが出来れば、この状況は変わるはずだ。
「諦めるな」
義藤の存在が悠真の背を支えていた。