赤に厄をもたらす色(10)
義藤はそっと赤丸と黒の色神の身体の前に膝を着いた。
「よく、頑張ったな」
義藤の手が悠真の頭に乗せられた。強いが優しい義藤が見せる、何ともいえない瞬間だ。
「秋幸、赤丸を頼む」
義藤はそう言った。
赤丸は義藤と同じく火の国の標準的な背の高さだ。細身であるが鍛えられた赤丸の身体は軽いとは言い切れないだろう。そして、黒の色神。都南よりも少し大きな背丈は、火の国の中では巨漢と言えるだろう。黒の色神も細身であるが、赤丸よりは重いはず。一人で持ち上げられるのか、そんな悠真の不安を吹き飛ばすように義藤は言った。
「悠真、黒の色神に色を送り続けろ」
義藤は言うと、彼自身より思いだろう黒の色神の身体を安々と持ち上げたのだ。
義藤に抱えられた黒の色神の身体は、黒の色神の身体に触れたままの悠真と一緒に紅の近くへと運ばれた。義藤は黒の色神の身体を運び終えると、赤丸を運ぶのに苦戦している秋幸への方へと足を進めた。
同じ姿形をした赤丸と義藤。いや、忠藤と義藤。二人が揃った光景は、不思議な光景だった。火の国に双子は少ない。その中でも、これほどまでに酷似した双子はさらに少ないだろう。そんな二人が並んでいると、不思議な光景だった。
義藤の口元が動き、何かを話しかけている。しかし、離れたところにいる悠真には何と言っているのか分からない。
(やっと会えたな)
そんなことを言っているのかもしれない。強い義藤が、これまで見せたことのない表情を見せているのだから。
紅の参戦により、事態は変わった。色神である紅の力は強大で、異形の者にも引けを取らない。連れてこられた赤丸の荒い呼吸は続いている。床に倒れ、身体を丸くし、大量の汗を流している。
義藤は赤丸の身体を横にすると、手際良く傷口を確かめ、丁寧に、それでも素早い手つきで赤丸の傷口を縛った。
「無茶をする」
義藤が低く呟いた。