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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と紅の石
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赤の決意(2)

悠真は義藤の品定めをしながら、赤の仲間たちに目を向けた。赤の仲間たちを見れば見るほど、紅は素晴らしい人たちに囲まれていると思うのだ。彼らは紅の仲間なのだ。突然、そうだな、と口にしたのは佐久だった。

「悠真君、ここに泊めると言ったけれど、やっぱり義藤のところに泊めてもらうといいよ。年も僕たちよりは義藤に近いし、気を使わないで済むでしょ。僕ね、こう見えても人を見る目はあるつもりなんだ。義藤と悠真君。きっと仲良くなれると思うんだ」

悠真は言葉を失った。正直なところ、悠真は義藤が苦手だ。悠真の必死の品定めの結果、義藤が良い奴だとしても、義藤の行動は紅を思うが故とはいえ、義藤はあまりに怖かった。白刃が目の前に迫った恐怖を簡単に忘れることは出来ない。ならば、佐久と一緒にいたほうが安心できた。野江が獅子なら都南は虎、義藤は狼といったところだ。佐久だけが普通だ。安全なのは佐久と一緒にいることなのだ。

「無茶言うのは止めてください。俺は今日、泊りなんで」

佐久の突然の申し出に、あからさまに義藤が拒否をし、もちろん、悠真も同感なので胸をなでおろした。良い奴だとしても、義藤の第一印象は最悪だった。義藤の家に泊まるのなら、床下で寝たほうがましだ。恐ろしい人の近くで休めるはずがない。小さく笑ったのは紅だった。

「分かった、今日、義藤は泊まりだ。佐久と都南、野江も一緒だ。小猿も来ればいい」

紅は誰もが反対することを容易く口にするから、空気を赤く染めていく。そんな無茶苦茶な、と佐久は言ったが、紅の決定を覆すことなど出来ない。

「嫌な予感がするんだ。官府が動き始める、そんな予感。犯人は、惣爺を殺しても、私が動かないことを知り、次はどんな手で出てくるのか分からない。過ぎた警戒ならそれでいい。私の命が奪われるくらいならそれでもいい。下手をしたら、私をはじめ、お前たちも殺されるぞ。石の警告はあたる。私が殺され、お前たちも殺されるようなことがあれば、次の紅を誰が守る?紅が死んでも次の紅が現れ、紅に代わりはいるが、紅に忠義を尽くす優秀な術士や将軍、技術者に代わりはいないのだからな」

紅は、紅の石を取り出した。赤の仲間は紅を守ろうとし、紅は赤の仲間を失わないようにしている。その関係は悠真には理解しがたい。

「これは、私の石だ。私が色神紅となり、最初に生み出した石。私以外に使用することが出来ず、決して色を失わない石。全ての石がどこで使用されたのか分かる。この石を官府に渡すことは出来ない。この石が警告している。だから、今日は危険なんだ。こうやって、私が小猿を気にかける理由、分かるだろ」

紅は立ち上がった。

「赤影も動かすのか?」

義藤が言った。「赤影」が何を指すのか悠真には分からない。ただ、赤影が強い存在であることは、会話の流れから理解できた。

「必要があればな」

紅の強い言葉に、義藤は苦笑した。

「紅は、紅の代わりは現れると言うが、俺はそうは思わない。俺は、お前じゃなきゃ共に戦うことはしない。忘れるなよ。紅は色神の前に、一人の存在なんだ。きっと、赤丸も同じさ。お前が紅だから、命を賭して守るんだ」

義藤はまっすぐに紅を見つめていた。赤の仲間たちは言っていた。義藤は彼女が紅となる前から面識があると。義藤は色神紅を守ろうとしているのではなく、彼女を守ろうとしているのだ。義藤はゆっくりと続けた。

「それほど紅が危機を感じているのなら、紅は野江のところに身を寄せるといい。赤と都南、佐久に護衛を任せて。俺は、紅の人形でも守っているから。その方が、官府の目も誤魔化しやすいし、官府も俺が紅から離れるとは思わないから、俺のところに官府をひきつけられる。何か事態が生じれば、紅は逃げやすくなる」

悠真は義藤の言葉に戸惑った。義藤は誰よりも紅の近くにいることを望むと思ったのだ。なのに、義藤の申し出は、彼が一人で危険な場所で囮になることを望んでいる。紅の警告は義藤が本気になるほど当たるから、義藤は自ら囮になると言ったのだ。確かに、紅の直属の護衛である朱護の義藤が、あの紅の部屋に残れば、敵は紅がそこにいると思うだろう。守るために、危険な状況に平然と足を踏み入れる。義藤には命を賭しても紅を守るという強い決意があるのだと、悠真は感じた。


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