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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の策略(12)

 クロウはイザベラを通じて紅を見た。紅はまるでクロウを挑発しているようだった。


――お前に仲間はいるのか?


紅に問われたような気がして、クロウはイザベラの動きを止めた。もう、十分だろう。十分に、瑞江寿和の願いを叶えた。寿和には、こう伝えれば良い。


――紅は怯えていた。

――まもなく、官府に助けを求めるだろう。

――あなたの天下もまもなくだ。


そんなお世辞を並べれば、天にも昇るような気持ちで寿和は喜ぶだろう。実際のところは、紅は冷静に黒の色神の訪問を受け止め、対応を練っているというのにだ。


 紅がこれからどのような行動をとるのか。クロウはそれを気にしつつ、他の色たちの動きを気にした。他の色も、他の国も動き始めている。白が火の国に来ている。白は、黒、赤と並び力を持つ色だ。命を奪う黒とは対照的に、命を救う色だ。それに、流の国も黙っていないはずだ。クロウが宵の国を統一した後、流の国は腹が立つほど早く動き始めた。負けはしない。クロウは思った。命を救う白にも、どこの国とも仲良くして貿易で立国している流の国にも、宵の国は負けはしない。クロウは負けはしない。黒が命を奪う色と蔑まさせたりしない。術士に囲まれた赤の色神紅に負けたりしない。


「九朗」

屋敷に戻ってきた寿和は息を弾ませていた。当然のように、興奮しているのだ。

「赤の術士が何と言うのだ!大したことなどない。紅も官府に助けを求めてくるに違いない。さすれば新たな従順な紅を擁立し、この瑞江寿和の天下じゃ!」

クロウは苦笑した。この男は何も分かっていない。新たな紅を擁立するということは、今の紅を殺すということ。紅は色神。クロウと同じ。元をたどれば、ただの人間だ。そのことを、この男は忘れている。人の命を奪い、それで前に進むというのは、卑劣な行為だ。理想があるでもなく、ただ、欲望のままに動いている。これではトップが取れるはずが無い。器の小さな男だ。

「おめでとうございます」

心にも無いことをクロウは言った。寿和は知らない。今、目の前にいるのが黒の色神であることを。クロウが火の国を喰おうとしていることを。今、寿和は火の国をクロウに売ろうとしているということを。


うぎゃぎゃぎゃ、と寿和は笑い、続けた。

「九朗。次は、殺して欲しい官吏がおる。紅に近づこうとしておる、愚かな官吏じゃ。消してしまえ」

九朗は和紙に名を書いた。もちろん、クロウは読めない。一つ、確かなことは、こうやって火の国の官府は紅との和解のチャンスをつぶしてきたということだ。


力で圧政しない紅が悪いのか。

愚かな官府が悪いのか。


どちらにしろ、火の国の内部反発はクロウにとってチャンスであるのだ。

「官府へ連れて行き、直接教えてください」

クロウが言うと、寿和は「うぎゃぎゃぎゃ」と笑った。


 クロウは、官府の内部に侵入する切符を手にしたのだ。

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