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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の策略(11)

 クロウはイザベラを通じて紅を見て、その目の強さに驚いた。侮れない。紅に対してそのような印象を抱いた。紅はクロウからすれべ愚かな決断を下す。仲間に秘密を教え、仲間を守るために戦う。それが赤の色神紅の本質なのだ。


 当然のように、イザベラに向かってきたのは、背の高い男と神の長い女性だった。彼らは優れた存在だ。背の高い男は、全体的に小柄な火の国の民の中で頭一つ飛び出している。鍛え上げられた身体は、例え宵の国にいようとも剣士として名を馳せただろう。生まれ持っての素質がかなり大きいはずだ。そして、髪の長い術士の女性。おそらく、彼女が火の国一の術士だ。石の力を引き出す力が強大で、クロウは宵の国でも同程度の力を持つ者を見たことが無かった。

 背の高い体に似合わず、俊敏な身のこなしでイザベラの懐に入り込んだ男は、イザベラを切り裂いた。同時に、術士の女性が補助する。長年二人で戦ってきたのだろう。二人での戦い方が作られていた。


しかし……


 どれほどに、彼らが優秀であろうとも、イザベラの敵ではない。一介の異形の者ならば押さえつけられても、イザベラは同じようにはいかない。なぜなら、イザベラのバックについているのは、黒の色神クロウなのだから。かわいそうに、イザベラの美しい体は、刀で斬られ、赤の光に押さえつけられ、傷ついていた。

「可哀想に」

クロウは呟き、片手をイザベラのいる方向に向けた。


――今、助けるからな。


クロウが力を与えると、イザベラが息を吹きかえしたように、力を強めた。

 ここで、紅を守る存在の命を奪ったら、紅はどんな表情をするだろうか。悲しむだろうか。黒の力に恐怖し命乞いをするだろうか。仲間を救う代わりにと、無色を差し出すだろうか。目的を見失い、ただ、ただ、クロウへの憎しみを募らせ無意味な戦争を宵の国にしかけるだろうか。クロウは単純に興味を抱き、斬りおとされたイザベラの首を動かし、男を狙った。


「さあ、イザベラ」


クロウはイザベラの目を通して、男の倒れる姿を想像した。


しかし……


またもやクロウの予想は外れた。紅は、クロウが想像した全ての対応と異なる。ヒラリとイザベラの前に飛び出してきたのは、間違いなく紅だった。鮮烈な赤を放ちながら、立派な刀を引き抜き、ひるむことなくイザベラに挑む。


 それが、赤の色神紅だった。


 紅が前に出てきたことで、最後の一人の男も飛び出してきた。常に紅の隣にいる男だ。背の高い男とは異なる。背が低いわけではない。ただ、細身だからあまり大きく見えないだけだ。けれども、細身の男もかなりの使い手だ。下村登一の乱の時に、似た男を見たから分かるのだ。天武の才というものは、限られた者に与えられるということだ。剣術も、まだまだ磨けば光るだろう。


 クロウは赤の術士たちを認めている己を恥じたが、それが正直な感想なのだから仕方ない。紅は優れた術士に囲まれ、信頼を勝ち取り、孤独でない。優れた術士を持ち、信頼できる仲間を持ち、己自身も前に出る。


 紅は剣術にも優れていた。

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