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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の策略(8)

 クロウは男の屋敷に招かれた。屋敷は豪勢だが、クロウの城に比べたら大したことはない。それに、屋敷には色が無かった。宿と同じように草を敷き詰めたような部屋が並び、外廊下が続いている。部屋の一室にクロウは招かれた。机を挟んで男と向かい合うと、男は言った。

「お前、名は何と言う?」

尋ねられて、クロウは答えた。

「九朗です」

クロウが答えると、男は「うぎゃぎゃ」と特徴ある笑い方で笑った。

「儂は瑞江寿和だ。儂の力になれ。九朗」

寿和は満足そうに笑っていた。


 寿和は、とてもプライドの高い男であった。そして、紅に対する強い敵対心を抱いていた。紅を蹴落としたい。その願いを隠しきれていない。同時に、官吏としても、相応の権力を持っている。だから、寿和はクロウに命じたのだ。

「九朗。都で異形の者を暴れさせろ。紅を苦しめ、追い詰めてやれ」

言われてクロウは頷いたが、同時に時期がまだ早いことを感じた。どうせ狙うなら、無色を狙いたい。

クロウは思ったが、傭兵であるクロウに選択肢は無い。時期は不満だったが、都で異形の者を暴れさせることは、悪い策ではなかった。ここにクロウがいることを、紅に知らしめなくてはならないのだから。


 命じられるがまま、クロウは動くことにした。そして、幸運はクロウにあった。人の未来を決めるのは、偶然なのか、運命なのか、それとも己の意志なのか、クロウは分からない。しかし、寿和が命じた日に、クロウが狙う無色が紅城から外に出たのだ。


――クロウ。あたしたち、信じられないくらいラッキーね。


黒が浮き足立っていた。それも当然だ。これまで、紅城に篭っていた無色が、偶然にも外に出てきたのだから。しかし、無色の小猿には術士が付きまとっていた。それは、都に無色が出てすぐに現れ、無色についていたのだ。

「面白い護衛だ」

イザベラを飛ばして、様子を見たクロウは笑みを浮かべた。無色には術士がついている。しかし、黒の色神の敵ではない。クロウの敵ではない。

 無色が店に入った後、クロウは寿和に言った。

「あの、店を狙う」

寿和は首を横に振った。

「もっと、派手な店を狙え。あんな潰れかけの店を狙ってどうする?」

クロウは寿和の愚かさに反吐が出そうだった。せっかくのチャンスだ。クロウは無色を狙うつもりだった。

「突然、異形の者が道に現れますか?どこから来たかも分からない。それが恐怖というもの。そのためには、入り込んだ店の方が都合が良い」

クロウが言うと、寿和は納得したかのように頷いた。

「なるほど、九朗も面白いことを言う。今の紅の失脚を図り、邪魔な赤の術士を排除したらお前を官吏に取り立ててやる。儂が紅の上に立ち、術士の任命権を手にしたら、お前を陽緋にでもしてやるさ」

どうやら、寿和は紅と赤の術士の殺害。そして新たな紅を己の支配下に置くことを望んでいるようだった。それこそ、火の国を滅ぼす行為だとも知らずに。

 クロウはイザベラの意志を宙に投げた。命じれば、イザベラはクロウの思うがままに動く。

「いっておいで。イザベラ」

イザベラが火の国の都を恐怖のどん底に突き落とす。クロウは紅が無色を助けに来るのを待てば良いのだ。

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