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一色  作者: 相原ミヤ
異国と火の国
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色図と流の国の色読(6)

 中央政府の役人を有無も言わせず黙らせたのは、メディラであった。メディラは若くして中央政府の幹部に入り込んだ色読。若すぎると蔑むものもいたが、それらを踏み越えるほどの実力がメディラにはあった。


 アンナは一人火の国へ向かう事となった。


 出立の準備は慌しく行われた。幸いアンナには家族がいない。反対する者もいない。そもそも流の国という国名の由来は「流れ者」からとられたものだ。外交文化に優れ、移民や異国の物を拒むことなく取り入れていく。だからこそ、文化は混じり進歩を進めていく。町を歩く人の姿かたちも異なり、髪の色や目の色、服装も異なるのだ。アンナの両親は、流れ者だった。そして、港にアンナを残して、次なる国へと去っていった。

 アンナは孤児院で育ち、術士の才覚を見出されて異例の若さで色読となるべく学校へと入った。メディラに気をかけてもらい、アンナはここまで生きてこれた。

 町を歩くと、様々な姿をした人がいる。背の高い者。低い者。金色の髪の者。茶色い髪の者。肌の黒い者。肌の白い者。その中でもアンナは異質であった。

 アンナは火の国に向かうことに躊躇いはない。火の国がどのような国なのか、流の国でまことしやかに囁かれる噂と、色図で示される赤が教えてくれるからだ。それに加え、メディラが火の国に親しさを抱いているのが不安を打ち消す要因の一つである。火の国には流の国が遣わせた術士がいる。アンナが頼ることが出来るのは、その一人だけである。


 出立は、色図の乱れを見つけてから十日後のことである。火の国までは通常帆船で向かう。しかし、今回は急を要すからこそ、石の力を使って向かうのだ。これで、クロウやソルトと同じくらいの時期に火の国にたどり着くことができるはずなのだ。

 青の石を使い、水を操り先へと進む。おそらくクロウは異形の者に船を引かせるか、己を運ばせるつもりだろう。ソルトは莫大な経済力で他色の石を使うだろう。ソルトは小さな小船で、青の石だけを頼りに火の国まで向かうのだ。


 メディラはアンナに紫の石を握らせた。そして、火の国での衣服と、移動中の水や食料を用意してくれた。最後に渡されたのは、名の書かれた紙であった。

「おそらく、彼は紅の近くにいるはずよ。探して、現状と私の名をお伝えなさい。彼は名を変えている可能性があるわ」

あまりに漠然とした情報であった。火の国は小さな島国とはいえ、まずは進入している術士を探し出すだけで大変そうであった。

「彼には、若い術士が行くと連絡をしているけれども、返事が無いから。でも、力になってくれるはずよ。まずは、紅城に行くの。何かあったら、すぐに連絡するのよ」

メディラはアンナに言うと、十分以上の石をくれた。


 見送りは誰もいない。夜中、誰にも知られないように、アンナは出発した。


――無色のいる火の国へ。

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