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一色  作者: 相原ミヤ
異国と火の国
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色図と流の国の色読(5)

 アンナが辺りを見渡せば、世界は色の世界から日常の世界に戻っていた。庭園を意識したように緑が植えられた色図の間。小さな噴水まである美しい造りだ。美しい彫刻に囲まれて、色図は安置されている。部屋の扉が開き、そこにはメディラを筆頭に、中央政府の幹部たちが立っていた。

「アンナ」

メディラが微笑んだ。ガラス張りの窓から、明るい太陽の光が差し込んむ。再び、アンナが色図に目を向けると、白と黒が火の国に向かおうとしているのが見えた。僅かだが、方向が変わっている。そして、火の国は警戒を高めている。

「メディラ様。火の国が力を持っています。その力を巡って、黒と白が動き始めました」

アンナが言うと、メディラたちが色図を覗き込んだ。美しく色がはためき、輝きを放つ。

「アンナが言うということは、それは本当のことなのでしょうね。大きく世界が動くわ。価値のあるものが変わり、力あるものが変わるかもしれない。その中で流の国は立ち向かわなくてはならないわ」

メディラの後を、一人の幹部が続けた。

「混乱が生じる前に手を打たなくてはならないぞ」

年配幹部の言葉は重厚を感じさせた。メディラは振り返り、答えた。

「その通りです。今のクロウは戦乱の宵の国を統一させた実力者。年齢も若く勢いのある男。クロウが世界に目を向けたのなら、情勢は大きく動く。その矛先が火の国に向かったのならば、火の国がどのような行動に出るのか考えられない。そして、今のソルトは幼い少女。なぜ、そのような幼い子がソルトとなったのか、当初は理解できなかったけれども、今なら分かるわ。今のソルトは聡明な子ね。重圧のかかるソルトとして五年も立つのだから。そのソルトが火の国に興味を持った。今の火の国の色神紅も優れた子ね。二年前に、一度は倒れると思ったのに、粘り続けている。今、勢いのある黒、白、赤が顔をあわせるということは、世界の変革を予兆させるわ。流の国の役割も大きく変わる」

中央政府の幹部たちは警戒を強めていた。これからアンナはどのように動くべきなのか、答えは既にでていた。無色がアンナに答えを教えてくれたのだから。アンナは言った。

「私は火の国へ向かいます。そこに、答えがあるはずです」

火の国が無色の力をどのように扱うのか。流の国は動向を知らなくてはならない。黒と白と赤が対峙し、争いを始めたとすれば、世界の危機であることに間違いないから。メディラはゆっくりと言った。

「火の国は世界の果て。遠くにある小さな島国です。流の国は様々な異国に、秘密裏に術士を派遣し同行を探っています。火の国にも一人、派遣をしています。火の国は遠く離れた未開の国。彼の母は火の国の民。父は流の国の商人でした。彼は流の国で生まれましたが、五つの頃に父が死に、七つの頃に母と共に流の国から火の国へ戻りました。優れた術士であるからこそ、術士としての派遣という形で母ともう一人の術士と共に戻ったのです。しばらくして、大人の術士が流の国へ戻る中、一人で火の国に残りました。母は彼が十の頃に死んだと連絡がありました。今、火の国にいる流の国とつながりのある術士は彼だけです。忘れた頃に、問題なし、との連絡が届くのみ。けれども、火の国に更なる術士の派遣をすることは人員的にも、術士の能力的にも難しく、彼一人に任せている状況です。火の国は難しい国です。進入するには、優れた力が必要なのですから。彼は今や心も火の国の民になり、流の国のことを忘れているのかもしれません。見た目も火の国の民のようであり、言葉も火の国の言葉を達者に話すのですから。それでも、彼を頼りなさい」

アンナは火の国に術士が派遣されていることを知らなかった。雪の国や宵の国には術士が派遣されている。しかし、火の国は神秘的で強い国だ。商人が僅かに覗く情報しか届かない。そのような国だ。

「さあ、皆様方。アンナが火の国に向かうことに反対の意見は無いことでしょう。火の国が核を握っているのは事実であり、火の国に侵入できる術士はアンナぐらいのものです」

メディラの言葉に、中央政府の幹部たちの表情が強張っていた。

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